第15章 お騒がせな新入生達
いつものように野球部のグラウンドへ向かう道を歩いていると、後ろから声がした。
「木下先輩!!」
振り返ると、佐々木君と新島君。
「どうしたの?」
「俺は男子応援団部に入部しに来ました! ガイダンスの先輩の姿に心を打たれ、俄然、やる気が湧いてきました!」
「はいはーい、俺も同じくー。応援頑張っちゃうんで、入部届けくださーい」
(二人とも、本当に入部してくれるんだ……)
「ありがとう、君達二人の決意、しかと受け取りました。これからよろしくね」
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というわけで、今日の部活動は二人に対して部についての説明を行い、顧問の磯辺先生の元に挨拶をさせに行き、入部届けを渡して終わった。
二人には先に帰ってもらい、私は普段通りのメニューをこなしてから帰りの支度をする。
(野球部……春の大会が始まる)
必死に打球を追っている選手達。投手陣の投げ込み。
(春の大会の応援が、私のデビューになる)
それまでには、女子応援団部と少しは話をつけておきたいものなんだけど……。
(念の為に、野球部の2軍や3軍の人にも応援練習してもらうか)
そうと決めたら、野球部の練習が終わるまで待つ。
ずっとその場に立っているのも暇だから、少し歩くことにした。
(!)
思わず足を止める。
(あれは、1年生……?)
目をギラギラと輝かせ、一点の曇りもなく前を見つめ、ひたすら走っている子。周りの選手はボールを使った練習をしているのに、ずっと走っているみたいだ。
(すごい汗……。水分補給してるのかな)
そう疑問を持った瞬間、私の体は自然と彼の元に歩み寄っていた。
「そこの走ってる君!」
私の声に、走るのをやめて振り返る。
「……俺すか?」
「そうだよ、水分補給しときなよ」
持っていたスポーツ飲料を投げ渡す。
すると、目を輝かせて彼はドリンクを飲む。
「ありがとうございます! この恩は忘れないっす! 俺、1年の沢村栄純と言います! お名前聞いてもいいですか!?」
「2年、木下結です。……どうして君だけ走ってるの?」
「……初日に寝坊したのと、御幸一也の奴に嵌められたんです! あ、御幸一也わからないか」
「いや、知り合いだよ……」