第12章 進級までの5ヶ月(バレンタイン編) ※主に御幸side
「……そう、それで俺は木下を男子応援団に誘ったんだけど……。正直、悪いことしたとは思ってるし、あいつが男子応援団入ったせいで先輩方もあいつに興味持ち出すし……」
しまった。と思った時はもう遅かった。
俺を見る真田の目が、男の目に変貌していた。
「……やっぱ、御幸にとっても結はそういう対象なんだな」
そういう対象……なんだろうな。
(てか)
「‘‘も”って言ったよな?」
「ああ。言っとくけど、俺の片思い歴は結構長いから。小学校の頃から数えて……何年だ?」
一つ二つと指を折っていく真田に対して、俺は一種の尊敬の念を覚えた。
(俺なんか、好きだと自覚してすぐに焦ってるってのに)
「幼馴染って、特別だけど辛いもんだ。1番近くにいるのに、この想いだけは伝えられねえんだから」
その想いを、真田は何年も何年も隠してきていたんだ。
(俺も、自分が野球部を引退するまで……待てるだろうか)
「ただいまー」
木下の声がして、俺たちは未だ何も調理を進めていないことに気がつく。
「やっべ! あれだ、昼はオムライスにするから、御幸はご飯頼む! 俺は結から卵受け取って焼くから!」
「バレンタインのやつはどーすんだよ!?」
「面倒だからパウンドケーキでいいだろ!」
とまあ、いざとなると気の合う俺と真田だった……。
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「「ハッピーバレンタイン!!」」
「……えーっと。あ、ありがとう?」
俺と真田からバレンタインを受け取った木下は首をかしげつつ、お礼を言う。
「あの、お昼のオムライスもすごい美味しかったし、うん。なんだか複雑」
「結のために作ったからな!」
(サラッとすげえこと言うな)
やはり、俺は爽やかさとかでは真田に叶いそうにない。料理も、真田のやつは結構うまかったし。
(野球では負けねえからな)
木下が応援するのは俺たちだ。
「引き分け」
真田がつぶやく。
「人としては、俺も御幸も同じくらいだ。引き分け。けど、夏の大会……青道に勝つ」
「負けねーよ」