第12章 進級までの5ヶ月(バレンタイン編) ※主に御幸side
木下の家は普通の二階建ての一軒家。
「お邪魔しまーす」
木下の後をついていき、リビングに入る。
キッチンとリビングがつながっていて、開放的な広さだ。物はあまり置いてなくて、必要最低限の家具しかない。
「あ、俊平紹介しなきゃ。呼んでくるね」
「待って」
無意識に木下の右手をひく。
「!」
だめだ、学ランを着ていないせいか……まじでこいつが可愛く見える……!
「ど、どうしたの、御幸君……」
(御幸、君……かよ)
未だに俺に対する呼び方が安定しない木下。苗字を呼び捨てで呼ぶ時もあれば、今のように「君」をつけて呼んでくる時もある。
「君なんて、つけなくていいから」
「え……?」
「とにかく、これからは君とかつけんな! ……もう、それなりに仲良くなった……って、俺なりに思ってるんだけど」
なんだか恥ずかしくなってきて、俺は手で口元を押さえて木下から目をそらす。
「御幸」
彼女の声に、俺は恐る恐る視線を戻す。
「……って、呼んでいいんだよね?」
木下も少し恥ずかしそうに微笑む。
「そう。俺もそっちの方が嬉しい」
「結ー。そいつが結の友達?」
ついに対面、木下の幼馴染でもあり、俺のライバルである男……。
「俺は真田俊平! よろしくな!」
そう言って、ニカっと笑いながら手を伸ばしてくる。
顔良し、身長高い、愛想良い、爽やか。
(こりゃあ、俺の特技である料理で突き放すしかねえな)
「今日はバレンタイン一緒につくるんだよな? どーする? 2人がバレンタイン作ってんなら、俺が昼飯作っとくけど?」
料理もできる、だと……!?
「俊平は料理うまいもんねー。どうしよ、じゃあ任せちゃおうかな」
「いーよ、俺が両方やる」
なんとなく、張り合ってみる俺。
「御幸、料理得意なの?」
「小さい頃からやってきたから」
「すげえな!」
素直に褒めてくる真田。やりづらいったらありゃあしない。
「てか、真田……だっけ? 俺の名前……」
「結から聞いてっから大丈夫!」
というわけで、バレンタインにも関わらず、俺と真田の料理バトル開幕!!