第12章 進級までの5ヶ月(バレンタイン編) ※主に御幸side
次の日、俺はいつものトレーニングウェアではなく、ちゃんとした私服(自分なりの)を着て青道近くのコンビニの駐車場に立っていた。
受験生が来るから、校門前で待ち合わせするわけにはいかないしな。
(なんか、緊張してきたな)
手土産に洋菓子とか持ってきたんだが、これからバレンタイン作るのに馬鹿じゃねえ?
(つか、謎の幼馴染もいんのか? そしたら俺……)
考えてもみろ。倉持の奴は、おそらく俺より木下と仲が良い。そして、俺なんかよりも長く付き添ってきた幼馴染のイケメン。鳴の奴は既に木下に告白したらしいし。
(1番遅れてんの俺じゃねーか!!)
「御幸君!」
木下の声がして振り返ると、
(うわっ)
ダッフルコートにマフラー、もふもふした耳当て。マフラーをつけているせいか、木下の髪がフワッと……。
「ごめん、待った?」
「ん、問題ねえよ」
可愛い……なんて言ったら、気持ち悪がられそうだからやめておく。
「じゃ、行こう」
心なしか口数が少ない木下。並んで歩いてみると、思ったより身長差があるものだ。15センチくらいあるんじゃないのか?
時折木下の方を見ると、目が合う。その度に俺は不自然にも顔をそらしてしまう。
昨日、あんな姿を見たからなのか、さらに木下を意識している気がする。
「あの、クリスマスプレゼント……」
「つ、つけてるよ!!」
木下はコートの下に手を伸ばし、なにやらゴソゴソする。
「出さなくていいって! 寒いだろ。つけてくれてるだけで、まあ、俺は嬉しいから」
「俊平……あ、私の幼馴染と同じプレゼントだったんだよね!」
「はあ?!」
俺が買った時、「恋人へのプレゼント」とだかなんだか言ってたんだけど。
(完全にライバルじゃねえか!)
しかも、なんだか色々と通じるものがありそうだし。
(今日は前途多難な1日になりそうだな……)