第12章 進級までの5ヶ月(バレンタイン編) ※主に御幸side
「おまえの気になるやつって、木下のこと?」
不意に言い放った言葉。けど、俺はずっと気にかかっていた。
昼飯とかも一緒に食べてるから、わかる。倉持が木下に向ける笑い方は、なんだか優しいものに変わっていた気がした。
「何で、そんなこと聞くんだよ」
倉持は否定も肯定もせず、目を背けたまま俺に質問を返した。
「理由なんてねえよ。気になったから聞いただけだし」
「お前も、木下のこと気になるんだろ?」
「……クリスマスの時のことか」
クリスマスのゲーム大会の時、俺は確かに「気になるやつがいる」と言った。確かにそうだ。それに、その気になるやつってのは木下のこと。
「けど、俺はあの時、彼女を作る気はないって言っただろ。気になるとか気にならない以前に、俺は野球に懸けてる」
「そうは思ってても、お前だって、木下に対する態度は他の女子とは違う。……俺達、2人揃ってあいつのことが好きなんだよ……」
言うな。
「ライバル助けるような真似はしたくねーけど、お前も俺も木下が」
「倉持」
俺は言葉を遮るようにして言い放った。
「これ以上、言うな。……駄目だ、俺。頭の中が整理できてねえ……今日のところは帰ってくれるか?」
「……おう」
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少しだけ、気づいてはいた。初めて木下と知り合った時から、徐々に別の感情が生まれていること。
誕生日のお返しのクリスマスプレゼントだって、恋人用の物を買った時点で俺の独占欲の表れだった。
(だからって、認めるわけにはいかねえだろ……。彼女作らないとか言っといて恥ずかしいし)
その時、俺の視界に携帯が映り込む。
(そーいや、連絡先聞いたんだよな……。少し、話してみるか。そしたら、何かに気づくかもしれないし)
メールだと相手の声色が伺えないと思い、俺は木下に電話を……
「やべぇっ! ミスった!!」
押したのはテレビ電話のボタン。しかも、木下はすぐに応答してきて……
「!?」
画面に映ったのは、下着が透けるほど薄い肌着に、少し火照った顔をした木下と……
(誰だよ?!)
俺と同じくらいの歳の黒髪のイケメンの姿だった……。