第12章 進級までの5ヶ月(バレンタイン編) ※主に御幸side
2月、東京にも雪が降ってきた。
(寒っ……)
小さい頃にスキーに行ったことがあるのだけど、その時に見た雪とは全然違う。都会の雪は固くて重い。
傘に降り積もった雪を頻繁に落としながら、私は駅から青道への道を歩く。さすがに雪の日の自転車通学は辛いからね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
学校に着き、教室に入った瞬間……
「!」
甘い香りと女の子同士のキャピキャピとしたやりとり。心なしか、男子もチラチラと女子の方を見ていたりするけど……。
カラフルなラッピングの数々、手作り感溢れるお菓子達。
(今日は2月13日だよね? バレンタインは明日だよね?)
私だって一応、バレンタインのことは覚えている。……とは言っても、先週「バレンタイン作ってくれよ」というメールを俊平からもらって思い出したんだけど。
「明日は受験日だから休みだろ!」
朝から元気な声の倉持君。あ、雪のおかげで朝練がなくて元気なのかな?
「明日かー、中学生くるの」
「だから、俺たち青道生は休みなんだよ! にしても、女子は準備がいいもんだな。ちゃんと今日、バレンタイン作ってきてるじゃねーか!」
「作ってこなかった私に対する嫌味かな? 倉持」
「ち、ちげーよ! だいたい、女からチョコとか……もらったことねーし……」
顔を赤くしながらうつむく倉持。
以前、倉持本人から「俺元ヤン」と聞いたことがある気がする。そりゃあ、ヤンキーにチョコあげる強者もいないだろうなあ。
「じゃあ、私が作ってあげるよ、倉持にチョコ」
「まじで?!」
その言葉を待っていましたと言わんばかりの反応。目を輝かせている倉持が可愛く思え、思わず笑ってしまう。
「明後日でいい? 渡すの」
「おう!!」
そんな約束を学校でかわし、何事もなく家に着いた。
「何で俊平がいるの?」
家に帰ると、当たり前のように「おかえりー」などと迎えてくるパジャマ姿の俊平。
「待って! 朝いなかったよね?! てか、あれ? 学校は?!」
「今日と明日は受験日で学校ねーんだわ。あ、結のとーちゃんとかーちゃん、今日明日は実家に帰るらしいから」
「私と俊平二人を残して?」
「そーいうことだな。ま、楽しくやろーぜ!!」