第11章 進級までの5ヶ月(クリスマス編)
カバンを部屋に置いてからリビングに入ると……。
「「「メリークリスマス!!」」」
父、母、俊平の三人がサンタやらトナカイやらの仮装をして私をお出迎え。
「た、ただいま」
「冷たい反応だな? 俺、料理まで作ったのによ」
「いや、小学生の子供のいるご家庭ならまだしも、女子高校生しかいない家でこんなことをするのも、ねえ?」
「俺は楽しくて好きだけどな! 今日は泊まってくぜ!」
テーブルに並べられた数々の料理。やりすぎなくらいの部屋の装飾。テンション。どれを取っても私には到底理解のできないものだ。
「まあまあ! とりあえず、食おうぜ」
俊平の言葉に、私たちは食事を始める。
「おいしー……」
自然と言葉が漏れた。俊平は昔から料理が得意だったけど、さらに腕を上げたようにも感じる。野球やってるのになんでだろう?
「結さ、俊平君をお婿さんにもらっちゃいなさいよー」
母の言葉に、口の中のスパゲティが鼻から出てくるかと思った。
「な、何言ってんの!?」
「お父さんも、俊平君がお前の婿になってくれるなら、安心だけどなあ」
「お父さんまで!! ちょっと、俊平、何とか言ってやって!!」
俊平は白い歯を見せて笑った。
「まだ早いっすよ! 俺達、付き合ってもないんすから」
(え、そういう問題?)
「そーよねー! 私達、俊平君を信じ切ってるから! 今日は結の部屋で寝なさいよ」
……うちの両親は一体……。
食後に風呂に入り、寝る支度を整えてから自分の部屋に行く。
ベッドの横に敷かれている布団。その上に俊平が胡座をかいて座っていた。
「何、今日は勉強しないで寝んのか?」
「うん。明日から冬休みだしね。課題が少なくて助かるよー!!」
なんて笑って見せた瞬間、私の顔面に何かが飛んできた。
反射でそれを取ると、青い小包。御幸からもらったものと同じサイズだ。
「それ、クリスマスプレゼント。開けてみて」
「あ、ありがとう」
早速開けてみると、鍵の飾りがついたシルバーネックレスだった。
「か、可愛い!」
「制服の下につけてりゃばれないだろ?」
「ありがとう! 俊平、大好き!!」
その時、カバンから少しはみ出して見える白い小包に目がいく。
(御幸がくれた物って……?)