第11章 進級までの5ヶ月(クリスマス編)
ここまで来てくれたのに追い返すのも悪いので、お言葉に甘えて送ってもらうことにした。
(変なの)
学ランのポケットに手を突っ込み、マフラーに顔をうずめる私とブレザーにネックウォーマーの御幸君。はたから見れば二人とも男子なのに。
「私、見た目が男子なのに……。わざわざ送ってくれるなんて」
「俺からしたら、心配なの」
私は駐輪場から自転車を持ってきて、自転車を引きずる。
青道からかなりの距離歩くと、本当にそこはただの住宅街。
「木下、あそこ見てみろよ」
御幸君が指差した先には、綺麗な電飾が施してある家。赤、緑、白という見事なクリスマスカラー。澄んだ冬の空気によく光って、思わず私は感嘆のため息を漏らす。
「キレーだね。クリスマスって感じ」
「遠出しなくても、クリスマスっぽさが感じられたよな!」
見上げると、御幸君のいたずらっぽい笑み。まるで、これを狙っていたかのようだ。
「御幸君と一緒に見れて、嬉しい……」
「俺も。……これ」
御幸君がブレザーのポケットから取り出したのは、小さな小包。真っ白な袋にピンク色のリボンが結ばれている。
「メリークリスマス。……誕生日のお礼」
「え……」
私、御幸君の誕生日はお昼をおごるくらいしかしてないのに……。
御幸君は頬を赤くして、私に無理やり袋を押し付ける。
「中身が女物だから!! お前以外に渡すわけにもいかねえの!!」
「えええ!? わ、私の為に用意してくれたの!? 私、クリスマスプレゼントなんて何も用意してないよ!!」
「何でもいいから、とりあえず受け取ってくれ!」
と半ば強引に押し付けられた可愛らしいプレゼント。嬉しくないはずがない。
(ああ……やっぱり、好きだ)
「ありがとう、御幸君」
「呼び捨てでいい。倉持のことも呼び捨てだろ? 堅苦しいし、俺らの距離が遠いみたいでなんか嫌だ」
(距離、近くてもいいんだ……)
「……御幸! メリークリスマス!!」
ああ、私はやっぱり御幸が好きだ。この気持ちを言うつもりはない。密かに想っているだけなら、きっと許されるだろうから……。
家に帰ると、玄関には大きな運動靴が。
(俊平、もう来てるんだ)