第11章 進級までの5ヶ月(クリスマス編)
さて、勝者は私と小湊先輩だ。
「勝者2人なんだけど、1人に絞る?」
小湊先輩の言葉に倉持が頷く。
「そっすね、じゃないと命令できねーし」
私と小湊先輩のじゃんけん……負けた。
(御幸君にもじゃんけん勝ってたよね、この人。じゃんけん強くない?)
小湊先輩はいつも以上に笑顔を輝かせて、部屋中を見回す。
「じゃー……。みんな、最近の色恋でも教えてもらおうかな」
「「「はあ!?」」」
特に激昂したのは伊佐敷先輩。
「俺らは健全な高校球児だぞ!? 恋愛する暇なんかねーっつーの!!」
「へえ? でもさ、他の人の色恋とか気にならないの?」
「……きになる」
というわけで、一回戦敗退組から順にバラすことに。
まずは増子先輩。
「この間、クラスの女子に「増子君、力持ちなんだね」と褒められてしまった」
はい?
「は、恥ずかしくて……うがああああ」
と赤面する増子先輩。これにはさすがの小湊先輩も困り顔だ。
(てか、女子に褒められただけであの反応とか、増子先輩いい人すぎる)
続いて結城先輩。
「告白された」
「誰にだよ?!」
またもや食いつくのは伊佐敷先輩。結城先輩は顔色ひとつ変えず、淡々と答える。
「D組の女子だが。今は野球に打ち込んでいる為、付き合うことはできないと答えた」
「……くそっ!」
何が悔しいんですか、伊佐敷先輩。
続いて御幸君。私が一番興味のある相手。
「俺もミス青道に告白されましたけど、同じ理由で断りましたよ」
と言った瞬間、伊佐敷先輩と倉持が同時に御幸君を締め上げる。
「ミス青道とか生意気じゃねーか、御幸!」
「淡々と語るんじゃねー! 腹立つだろ!」
……なんだ、新たな情報はないのか。
「御幸はしょっちゅう告白されてるけど、本命はいないわけ?」
(ナイスです、小湊先輩!!)
御幸君は2人に締め上げられながら、口を開く。
「気になってるやつはいますけど、野球引退するまでは彼女作るつもりないですよ」
(気になる人……?)
胸が締め付けられる。苦しい、嫌だ。御幸君に特別がいるだなんて、信じたくない。
なるべく表情に出さないようにするため、御幸君にどつく。
「いつでも彼女が作れるみたいな言い方ね、御幸君?」
「そんなんじゃねえって!!」