第11章 進級までの5ヶ月(クリスマス編)
四強が出揃ったところで、ハプニング発生。
「やべえ! 設定間違えた!」
倉持の言葉を問いただそうとした瞬間、ゲームが始まってしまう。
「ねえ、これってどういうこと?」
小湊先輩の言葉もうなずける。何故なら、私の選択したキャラクターであるチャイナ女と、小湊先輩の選択したフードを被って鎌を持っている男が赤く光っている。
逆に、伊佐敷先輩の選択した顔に傷の入った歴戦の猛者のような風貌のおじさんと、倉持の選択した迷彩服を着た野生味あふれる男は青く光っている。
「タッグバトルにしちまった!!」
つまり、私と小湊先輩のチームvs伊佐敷先輩と倉持のチームってこと。フィールドは海に浮かぶ豪華客船。画面が四分割されていて、スタート地点はそれぞれ異なっている。
「く、倉持! どーすんの!?」
「どーもこーも、戦うしかねーだろ! これが決勝戦、勝った方がこの大会の勝者だ!!」
「俺はそれでもいいよ。あ、勝った方がみんなに一つ命令できるとか?」
「いいじゃねえか! 望むところだ!!」
変則タッグマッチのスタート!
(まずは小湊先輩に会いに行かなきゃ)
一般客のいない豪華客船の中をチャイナ女が駆け巡る。すごい光景だ。
「!」
後ろから追いかけてくる男が。……小湊先輩じゃない、伊佐敷先輩だ!
「悪りぃが、タッグ組まれたら厄介だからな。ここで終わりにさせてもらうぜ」
「くっ……」
「木下さん! 逃げろ!」
私は応戦せず、ひたすら逃げることにした。しかし、伊佐敷先輩が後を追ってくる。
扉を開けると、そこは船の甲板部分だった。中の明るい雰囲気とは一転、外は大嵐だった。足場が安定せず、チャイナ女はヨロヨロと歩く。
「万事休すだな、木下」
悪役の極みとも言える台詞を吐く伊佐敷先輩。けど、本当にそうだ。
(逃げ場は、ない)
伊佐敷先輩が重そうな大剣を持って私に襲いかかる。それを必死で避け続けていると、背後は荒れた暗い海の飛沫が飛ぶ。
(これ以上下がれない……)
しかし、素手でしか戦えないキャラクターだ。何ができるというのだ。
『やめなさい! 私を殺す気!?』
『みっともないぞ、せめて楽に死んで行け』
中のキャラクターまで話し始める。
『そうだね、せめて楽に死なせてやるよ』