第11章 進級までの5ヶ月(クリスマス編)
早速、Aブロックの試合。私と増子先輩のバトルだ。
テレビの画面に「最強は誰だ!? 〜人間界の死闘(デスマッチ)〜」と仰々しいタイトルが映し出される。
私は初心者なので、増子先輩に操作の仕方を教えてもらう。
「よろしくな、木下ちゃん」
「よ、よろしくお願いします」
経験者の増子先輩相手じゃ、勝負も分かりきっている。
(何で初戦なの! ボコボコにやられるの恥ずかしいよー)
増子先輩は上半身裸の筋肉質な男を選択。私はチャイナドレスを着た細身の女性を選択。服が色々と危なくて過激なんだけど。
バトル開始の合図で筋肉男とチャイナ女が地面を蹴る。フィールドは夜の繁華街。すごい設定だと思う。
「うがあっ!!」
増子先輩の声と同時に筋肉男が強烈なパンチを放つ。チャイナ女は躱したけど、近くの建物が崩壊していく様子がなかなか凄い。
「増子先輩怖いですよ! あれが当たったら一撃で女の子死んじゃいますよ!?」
「増子先輩大人気ないっすよー」
倉持の冷やかしの声に増子先輩がピクリと眉を動かす。
(今だ!)
よくわからないけど隙ができた! 必殺コマンドを押すと、「必殺技」という文字が画面を横切る。
「うがっ!?」
セクシーボディを持つチャイナ女が長い黒髪を耳にかける。
『オニーサン、私ト遊ンデミル?』
ピンクオーラ全開のチャイナ女に筋肉男がオートで移動していき、目をハートにした……その瞬間。
『ハッ! 馬鹿男ね、くたばりなぁっっ!!』
甘い声とは一転。恐ろしい表情になった女が、筋肉質の男にヒールのかかと部分で蹴りかかった。
そして、男は地面にひれ伏し、「再起不能」の文字。
(え、これって……)
「勝者、木下ーっ!!」
「うがあああ」
無事初戦を突破した私。
Bブロックの試合は、うん。
「哲! 勝負だ!」
「望むところだ」
と挨拶をかわした直後、結城先輩が操作を間違えて自爆。開始3秒で伊佐敷先輩の勝利が確定した。
Cブロックの小湊先輩と御幸君。お互いに相手を観察し過ぎてキャラクターが動かず。10分を過ぎたところでジャンケンで決着が着き、小湊先輩の勝利。
Dブロックのクリス先輩もすごかったけど、さすがは倉持。満を持してクリス先輩に勝利。
……四強が出揃った。