第11章 進級までの5ヶ月(クリスマス編)
こうして、私のクリスマスは野球部員との格闘ゲーム大会になってしまった。
「よし、誰もいねーな」
女子を寮に連れ込むのは禁止ではないけど、さすがの倉持も気を遣っているみたい。周りに人がいないのを確認してから私の手を引く。
倉持の部屋には既にたくさんの人が集まっていた。
(1軍メンバーばかり)
結城先輩、伊佐敷先輩、小湊先輩、クリス先輩、増子先輩……あと、同学年では御幸君。
先輩後輩の仲が良いことをうかがわせるメンバーだ。3年が5人、2年が2人だけというのもなかなか勇気が要る。
「よお、応援団長じゃねーか!!」
伊佐敷先輩の怒鳴るような声に自然と身震いしてしまう。
「ほら、怖がってるじゃん。男子応援団でも女の子だよ?」
小湊先輩はにっこりと微笑んで私に小さく手を振る。いや、いつもこの人は笑ってるんだよね。
「木下さんも来たのか。また今度、バッティングセンターに付き合ってもらいたいものだ」
「あ、はい! ぜひ、よろしくお願いします!」
結城先輩に頭を下げていると、御幸君に首根っこをつかまれる。
「何?!」
不機嫌そうな御幸君は私をずるずるとクリス先輩のところまで引きずる。
「この人が2年のクリス先輩。俺と同じキャッチャーで、俺の目標でもある人だ」
クリス先輩……なかなかオーラのある先輩だ。
「話は御幸君から聞いてました! あの、素晴らしいキャッチャーだったそうで……。私も中学でソフトボールのキャッチャーやっていたので、その、クリス先輩のキャッチャー姿見たいです!!」
同じポジションの人に会うと、なんだか荒ぶってくる。すごく嬉しい。
「……いつか、見せてやるよ」
(なんだろ、寡黙だからこそ言葉に重みがあって……)
初めて話したけど、クリス先輩といると精神が落ち着く……というかなんといいますか。
「はい! これからクリスマス、格ゲー大会を始めます!! 試合順考えたんで、それぞれバトル相手を確認してくださいッス!!」
1回戦
A……木下結vs増子透
B……伊佐敷純vs結城哲也
C……小湊亮介vs御幸一也
D……滝川クリス優vs倉持洋一
2回戦
Aの勝者vsBの勝者
Cの勝者vsDの勝者
決勝戦
2回戦の勝者