第10章 進級までの5ヶ月(御幸誕生日編)
お昼休み、私と御幸君は一緒に購買へ足を運ぶ。お昼の時間帯になると人で溢れかえっている。もはや、何が陳列されているのかもわからない。
「あの、食堂とかでガッツリ食べなくていいの?」
青道高校は私立だ。購買があるけど、食堂もある。いつも倉持と御幸君は購買で昼を済ませ、私の所へ来てくれているのだけど……。
(私に気を使ってるのかもしれないし……)
私は自宅通いだから、弁当を持参している。でも、二人は寮通いだからお弁当なんて作れない。
「いーのいーの。大体、屋上で飯食うんだから。購買じゃないと無理だろ?」
「……そーだけど」
御幸君はおにぎりを4つくらい取り、おかずの唐揚げもとる。
(さすが運動部!)
それに加え、パンも2袋とっていく。
「炭水化物多いね。……野菜は?」
御幸君は少し口を尖らせる。
「朝晩は食堂のおばちゃんが栄養バランスの良い食事をつくってくれてるんで問題ありません」
「……ま、いいけど」
私は御幸君に千円札を押し付け、購買から離れる。そして、自動販売機で「ベジタブルライフスタイル」という野菜ジュースを買う。
(こんなもんで栄養なんてとれないだろうけど)
会計を済ませた御幸君と横並びになり、階段を上がる。
屋上の扉を前にして、なんだか緊張してきた。
(入部した次の日以来、ここに来るのは初めてだ)
そっとドアノブに手をかけ、ドアを開けると……。
「○○の為にお弁当つくってきたの!」
「ありがとう! じゃあ、あ〜んってしてくれよ」
「やだあ! 恥ずかしいもん」
「してくれないの?」
「嘘! してあげるよ!……はいっ、あ〜ん」
私が一大決心をした思い出の地は、カップルの巣窟となっていた。
5組以上のカップルがそれぞれ世界をつくっている。そんなピンクオーラ全開のこの場において、私と御幸君は明らかに異質であって……。
「御幸君、どーしよ」
「どーしようと言われても、俺も初めてなんだよ、ここに来るの」
「しかも、私なんか学ランだし。カップルの中に男二人ってのも……」
「ま、いいか。……行くぞ」
そう言って、御幸君は私の手を力強く引く。
「え、行くの!?」
「大丈夫大丈夫。俺達がカップルでもおかしくないだろ?」