第9章 野球部秋の新人戦! ……の前に
Mei side
いつも、野球練習するときに視界に入る稲城実業高校男子応援団部。
(目に入るところで練習されるなら、チア部の方が嬉しいんだけどなあ)
けど、違った。なんか、なよなよした男が増えてる。華奢な体つきで、うちの生徒じゃない……っぽい?
「鳴、休憩だ」
キャッチャー兼キャプテンの雅さんこと、2年の原田雅功さんが俺に声をかける。
「ええー? まだ俺、ピンピンしてるんだけど?!」
「馬鹿、水分補給くらいしとけ。あと、練習中に応援団ばっか見るな」
「はーい」
適当な返事を返して、俺はドリンクの元ではなく水道場に向かう。……勿論、他校の応援団員を見てみるために。
「あれ? うちの生徒じゃないの?」
我ながらわざとらしい声のかけ方。けど、かけられた本人は驚いているみたい。てか、近くで見れば見るほど女みたいな顔してる。
「青道高校応援団部です……」
(へえ、青道ね)
「俺は成宮鳴!」
「1年の木下結です」
女の子だってことに気がつかなかった俺。いや、仕方ないよ。髪の毛短いし学ランだし。
(でも、女の身で男子応援団とか変な人っ)
これが彼女に対する第一印象。
それでも、練習は一生懸命やってたし、すごく眩しかった。
極め付けは俺の投球をキャッチャーとして捕ったこと。
その時の彼女の表情がなんとも言えなくて、きっと彼女は野球が好きなんだろうなって思った。
俺としては、野球が好きな女の子の存在は貴重で嬉しかったし、何より彼女自身が気になった。
連絡もちょくちょく取り合い、今日は勉強まで教えてもらった。
(こんな人が奥さんだったら、野球もやりやすいだろーな)
そして、気づいてしまった。
彼女を恋愛対象として見てしまっていることに。
(学校違うし、もし、俺の知らないところで結が誰かの恋人になんてなったら……)
出会ってわずか2日。それでも、失いたくない。誰にもあげたくない。結が誰かのものになってからじゃ遅いんだ。なんとかして繋ぎとめなきゃ。
(俺、独占欲強いもんねっ)
想いさえ伝えられれば、俺のことを意識させることができるでしょ……?