第9章 野球部秋の新人戦! ……の前に
「俺は何度も、木下に応援されることが嬉しいって言ったはずだけど?」
至極当然のように返答する御幸君。
間違ってなどいない、彼の言うことは正しい。
「御幸君が、私を応援団に誘わなければよかったと言っていて……それを聞いちゃって、すごく不安になった。私が女だから、御幸君の期待に添えなかったんじゃないのかって、ずっと考えてて」
(理不尽なのはわかってる。私の思い込みなんだから、御幸君は何も間違っていない)
私は床に目をやり、ギュッと閉じた。
「それは俺の個人的なって言うか……あれだ、別に木下を否定してるんじゃなくて、ただ単に俺のわがままってなんていうか……」
「ええ?」
私は勢いよく顔を上げ、御幸君を見る。心なしか、御幸君の頬が赤い。
「なんだあ……。なんか、ホッとしたら気分も落ち着いてきちゃったよ」
御幸君に話しただけ、誤解が解けただけ。たったそれだけで、こんな温かい気持ちになれるだろうか。
(恋のなせる技……てか、私の場合は青道野球部と恋愛禁止だったんだ。え、早速失恋じゃないか)
そんなことを考えていると、御幸君が私のシャツの袖を引く。
「トイレ、なんていうのも嘘だろ? ……昼飯、食おうぜ」
私は袖を引かれながらにやけが止まらなかった。
(部活引退までこの気持ちを隠して、あと2年間この気持ちが変わっていなかったら告白しよう)
なんてことを胸に誓って。
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作者です。御幸先輩、誕生日おめでとうございました。執筆が間に合わず、誕生日祝い小説が書けなかったので、本編で祝うとします。
……ですが、次回から鳴ちゃん中心の話になりそうです……。