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詰襟応援団!! 【ダイヤのA】

第8章 今は伝えない 《真田俊平》


「俊平のバカーっ! このノーコン! アホんだらー!」


俺がよく結に言われた台詞。

親ぐるみの付き合いもあって、俺達は物心ついた時から友達だった。

小学生の頃から俺は野球チームに所属し、結はソフトボールクラブに入っていた。
お互いに暇があれば、決まった空き地でキャッチボールをしていて。でも、あの頃は俺より結の方がコントロールも良かったし、センスもあった気がする……。
俺がキャッチボールで暴投するたびにあいつは叫び、怒りながらボールを追っていた。
それでも飽きずにキャッチボールに付き合ってくれて……。

中学に進学して、俺達はそれぞれのクラブチームをやめて部活動に専念。もちろん、お互いに違う学校だから会う時間もなくなった。

俺達をつないだのは、中学2年で買ってもらった携帯電話とお正月の顔合わせだけ。

結はキャッチャーとしての才覚を現し、メキメキと上達していった。

昔から変わらない勝気な物言いで俺に電話をしてきたり、メールを送ってきたり。

『高校から推薦きたらどーしよー!!』

なんてメールもしてきたな。
俺は身長のお陰もあり、それなりのピッチングはできた。けどまあ、そこまで優れたピッチャーでもなかったな。


高校に入り、俺はまた野球部に入った。無難に取り組んで、それなりの青春を過ごせばいいなと。
結は青道に入学して、ソフトボール部に入ったと聞いた。
毎日元気なメールを送ってきていたが、ある日を境にメールは途絶えた。親から結が部活を辞めたことを聞き、俺から電話をかけた時

「……そっか、もう知ってたんだ。気にしなくていいよ、未練とかないし、それなりに高校生活過ごすから、俊平は野球部頑張れ……」

初めて元気のない声を聞いた。
連絡こそとるけど、以前のような気の強いあいつはどこかに消えたようで。


(けど、今は応援団頑張ってるんだよな)

俺は、後ろで寝息をたてている幼馴染の手の上に自分の手を重ねる。

(なら、この気持ちも迷惑でしかねーな)

小さい頃から募らせた気持ちを、ここで言う訳にはいかない。……本当は言いに来たんだけどな。


俺が結にふさわしい男になったら、気持ちを伝えよう。

頑張り屋なお前が、好きだって。
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