第7章 男女の間にあるもの
いつぶりだろうか、俊平と会うのは。
(お正月の顔合わせ以来かな)
私の目の前であぐらをかく俊平をじっと見て考える。
俊平の母と私の母が高校時代の同級生で、小さい頃から私と俊平は遊んでいた。けどまあ、距離ができたのは中学からかな。
「久々に会えて嬉しいんだけど、わざわざうちに来るなんて……何か用があったの?」
「最近、ケータイでしか連絡とってねーだろ? たまには会って話そうかと思って」
それにしてもタイミングの悪い。
私は今日、御幸君の言葉を受けて泣きそうになり、家で泣くつもりで我慢してきたのに。俊平がいるんじゃ泣けないじゃん。
「俊平はさ、部活……頑張ってるの? 適当に……流してるだけ?」
頻繁に連絡を取り合っていたからわかる。俊平は野球に打ち込んでいない。でも、本人から聞かなきゃね。
「西東京地区なんて、青道と稲城実業と市大三高が制すに決まってる。だから、他の学校の野球部なんて大抵諦めてるもんだし。すごい監督がいたら可能性を信じて頑張るかもしれないけど、薬師にはそんな監督はいない」
そこまで言ってから俊平は大きく息を吸う。
「けど、この間すげー親子が来たんだよ。言ってることが正論で、カリスマ性を感じずにはいられねえ親父と、その息子の素振りを見ただけで鳥肌が立っちまった。その時、俺は甲子園への可能性を見たんだ」
俊平は祈るように拳を握りしめた。
「その親父さんは来年から正式に監督になるっぽいし、息子も来年入学してくるらしい。だから、俺はその時に薬師のエースピッチャーとして戦えるよう、練習する。そう思うと、俺のこの半年間が馬鹿みたいで……」
そう言って俯いた俊平の手を、私はそっと包み込む。
「嬉しいよ。俊平が頑張ってる姿がまた、見れるんだから」
すると、俊平は勢いよく私に抱きついてきた!
「?!」
「結がたとえ青道の応援団でも、容赦しねーからな。……無の半年を埋めるくらい、俺はこれから頑張る」
俊平の香りを感じながら、私は小さく頷いた。