第7章 男女の間にあるもの
放課後、私の脳内で御幸君の放った言葉が何度も再生される。
(誘わなければよかったって……)
手首を掴まれて言われた「女」という言葉。もしかしたら、私の応援では足りないのかもしれない。どんなに足掻いても、「男子」応援団部としての役割が果たせないのかもしれない。
(でも、まだ始めたばかりじゃん……)
私は早いうちから諦められたのかもしれない。
空を見上げると、一面が真っ白。青い空が見えない。
横を見ると、私以外に誰もいない。
「よくやってるよなあ、私」
たった一人なのに。女子なのに。それでも頑張れていたのは、野球部の頑張りの触発されたから。
心から御幸君を応援したいと思ったから。
(応援される側に嫌われるとか、辛すぎ……)
今日は何もやる気になれなかったので、一通りふりを確認してから学校を出た。
いつもの倍くらいの速さで自転車を漕ぐ。
向かい風よ、私のこの暗い気持ちも全部飛ばして。全部
どこかに置いていって……。
力なく家の玄関に入ると、革靴が並べてある。
(お父さん……は夜帰ってくるわけだし、お母さんは専業主婦だから……お客さんかな)
あまり足音を立てないように家に入る。
「結、帰ってたのー? 俊平君来てるわよー」
(俊平?!)
急いでリビングに向かうと、間違いない……。
「俊平……」
すらっと背が高く、二枚目の男。クールな外見に合わない力強い瞳。
私の幼馴染であり、相談相手……真田俊平だ。
「今日は部活なかったし、久々に遊びに来たんだけど。元気そーだな」
俊平は野球部だ。ちなみに、私と同じ東京都の学校の薬師高校。野球の強豪校ではないけど、俊平は中学で野球をやっていたため、高校でも続けてるって感じ。
「てか、学ラン似合ってる。まじで男かと思った!」
「生物学上は女ですけどね。ま、どっちでもいいや」
「……元気にやってそうで何よりだ」
俊平の笑顔に、私もつられて笑ってしまう。それが彼の不思議なところだ。
「あんたら話すなら部屋行きなさいよ? 後でお菓子持ってくから」
と母の提案もあり、私と俊平は別室に移動することとなった。