第7章 男女の間にあるもの
私はこの学校の野球部と恋愛をするつもりもないし、まず恋愛が許されていない。しかも、見た目はただの男だ。だから、御幸君が傍にいてくれる。
(御幸君はストイックな人なのかね)
イマイチ距離感が掴めない。
「そーいや、哲さんが木下とバッティングセンターに行ったこと、嬉しそうに話してた」
「え?!」
「経験者らしい、良い振りをしてたって」
まさか、結城先輩が褒めてくださっていたなんて。
嬉しさと恥ずかしさでなんだかムズムズする。
「あと、お揃いのストラップのことも嬉しそうに言ってた。……哲さんのあんな顔、初めてかもな」
御幸君は不意に私から目をそらし、小さく呟く。
「毎日でっけー声出して、1人で練習してるもんな……。俺達野球部も、木下の頑張りはよく見てるから」
「な、何を突然……」
その時、御幸君は一瞬で私との間合いを詰めてきて、私の手首を掴む。
「!」
顔が、近い。
御幸君のまつ毛が数えられそうなくらいだ。
「そのくせ、細い手首。……何が「男子」だ。ちゃんと女子だよ、木下は」
御幸君が変だ。
私の手首を強く握り、こんな距離で会話をするだなんて。
「どうしたの、御幸君」
「……応援団に誘うんじゃなかった」
(え……)
御幸君はそう言い放ち、私から離れていった。
そして、今日は1度も口をきくことがなかった。