第6章 学校生活の変化
青道から歩いて20分くらいにあるバッティングセンター。ちなみに、結城先輩は徒歩で通学しているので、私は自転車から降りて結城先輩と歩いた。
バッティングセンターに入ると、仕事帰りのサラリーマン風の男の人や、若い人たちもいた。
「結城先輩は何キロの球を打つんですか?」
「とりあえず、130キロを打ってから、基本は140キロで練習するつもりだが。木下さんもやるか?」
「そうですねー……120キロの球を打ってみます」
それぞれ打席に入る。
隣の打席に結城先輩がいるから、少し緊張してしまう。
外も暗くなってきて、バッティングセンターのナイター設備が稼働し始めた。
100円玉を何枚か投入すると、ボールの射出口があるスクリーンにプロ野球選手が映し出される。どうやら、この選手のモーションに合わせてボールが出てくるらしい。
ピッチャーが振りかぶって……投げる!
シュッと風を切る音とほぼ同時に、後ろのネットにボールが当たる音がする。
(バッティングセンターで空振りしちゃったよ?!)
これは恥ずかしい。いくらソフトボールとピッチャーの距離感が違うからといえ、空振りは恥ずかしい……!
隣の打席では結城先輩が気持ちよくボールを打ち返している。
ピッチャーよりもっと奥にあるネットの十分な高さ部分に「ホームラン」と描かれた的がある。さっきから、その周りにボールを打ち返してる結城先輩。
(さすがだなあ)
なんて思ってたら、もうピッチャーが振りかぶってる。そうだよ、機械だから私の準備なんて待ってくれない……。
結局、私は一打席でやめにした。
結城先輩は140キロの打席に入り、またもや綺麗に打ち返している。
(……練習してきたんだもの)
チームの四番であり、キャプテンの結城先輩。バットの振りにも迷いがなく、こんな凄い人のバッティングを間近で独り占めできる私は幸せ者なんだと感じる。
その時、「ホームラン!! 打った人は景品を取りに来てね!」と可愛らしい声が放送で流れた。
その放送の後、結城先輩が打席から出てきた。
その額には汗が浮かんでおり、先輩は袖でその汗を拭った。
「木下さん、景品を取りに行こう」
(やっぱり、結城先輩が打ったんだ!)
自分が打ったわけでもないのに、自然と顔がほころんだ。