第6章 学校生活の変化
放課後、私は野球部のグラウンド近くで練習を始めようとする。
1人で出来ることなど限られてはいるけど、自分なりにルールやメニューを決めて頑張ろうと思う。
(とりあえず声出しと、腕を振っとくのと……休日練習の復習しよう)
声出しもなかなか難しい。稲城実業の応援団に教わった時も苦戦した。
喉を潰して叫ばなければならないということ。丁度、喉に痰が絡まった時に出す声みたいな感じらしい。
「あ゛ぁ゛ーーーーっっっ」
その声を出しながら10秒間耐久。これを5セットほどやる。
3セット目を終えたくらいで、近くに誰か歩み寄ってきた。
「本当に1人で活動してるんだ、男子応援団部」
「よくやるよね、それ、無駄な努力だよ?」
可愛らしい声の方を振り返ると、ジャージ姿の可愛らしい女の子たち。いや、美人って感じの子もいるか。とにかく、顔面偏差値の高い女子ばかりだ。
「えっと、どちら様で……?」
私の疑問に、1人の背の高い女子が前に出た。
「あたし達は女子応援団部よ。男子応援団部に部員が入ったって聞いたから、どんなもんか見に来たんだけど」
「あ、挨拶もしてませんでしたね! 申し訳ないです。私は応援団長を務めさせております、1年の木下結と言います!」
ぺこりと頭を下げると、髪の毛を引っ張られて無理やり顔を上げさせられる。
「?!」
強い力で引っ張られているので、髪の付け根が痛む。
「いい気にならないでよ? うちの学校は野球部が強いから、部員数が足りなくても男子応援団部は存続してるけど、1人でなんか何もできないわ」
女の子の鋭い瞳に、私の胸がざわつく。
(美人は間近で見ても美人だなあ……なんて場合じゃないよね、これ)
「1人だからって贔屓にされてるみたいだけど? あたし、知ってるのよ? あんたが運動部辞めた半端者だって。半端者に応援なんかできないし、何よりあんた…邪魔なのよ」
「……それってどーゆー意味ですか」
「口答えしないでよ?! いい? カオリはミス青道なのよ? あんたみたいな性別もはっきりしない女が、御幸君と仲が良いなんて認めないから!」
第三者の介入により、私の髪を引っ張っている美人な女子はカオリちゃんということが判明した。
(てか、御幸君絡みですか……)