第6章 学校生活の変化
御幸君に対して抱くこの感情は、一体何なのだろうか。
出会いは最悪で、御幸君の勝手な理由で応援団になったわけだ。でも、応援団になったことで私に熱中できる何かができたのも事実。
「私は御幸君に感謝してる」
「はあ? どーゆーことだよ」
私のつぶやきに倉持は眉をひそめる。
「応援団に誘ってくれたこと。だから、私にとって御幸君は恩人なんだと思うの」
(だから、こんなにも彼が気になる)
告白って言ってたけど、彼はその告白の返事をどうしたのかとか。今、想い人がいるのかとか……。
「ふぅん? ま、別にいいけどな」
倉持は何やら意味深に笑い、私の弁当の唐揚げをヒョイとつまみあげ、一口で食べてしまう。
「あ! 私、唐揚げ好きなのに!」
「ボーッとしてるお前が悪いんだよ! つか、女子の癖に唐揚げ好きかよ!」
「いいんです。身なりは男子だから」
そんなたわいのない会話をしていると、教室の扉が開く。
姿を現した御幸君は、いつも通りの様子。何の変化も感じられない。
「お前ら、一緒に飯食ってんの?」
御幸君の問いに、「まあな」とそっけなく返事を返す倉持。
「俺も一緒に食っていい?」
「俺はいいけど、木下は?」
突然のフリに、私は首を縦に振ることしかできなかった。
返事、どうしたの?
なんて聞けるはずもなく。ただ、無言で弁当を食べていた。
「お、そーいや、返事はどーしたんだよ? つか、相手誰だったんだ?」
倉持の問いに、御幸君はおにぎりを食べながら答える。
「A組のミス青道の子だよ。なんか、試合観てて一目惚れやらなんやら」
(ミス青道!!)
つまり、可愛い子ってことだよね。
「断ったぜ? あいにく、俺の恋人は野球なんで。引退するまで彼女つくる気はねーよ」
「てことは、引退したらつくるのかこの野郎! イケメンは言うことが違うなあ?!」
食事中にも関わらず、倉持は御幸君にプロレス技をかける。
「馬鹿っ! 俺のおにぎりッ……」
引退まで彼女を作る気はない。
彼はそう言った。安堵感と胸の痛みを同時に感じた私は、思わず廊下に駆け出し、誰もいないところで深呼吸をした。
「どうしたんだろ、私」
「女の顔になってるな、木下」
そう言ったのは、応援団の先輩の松浦先輩だった。