第6章 学校生活の変化
「ご、ごめん!」
「あー……いや、別に謝ることのほどでもないんだけど」
御幸君は気まずそうに目をそらす。
「つか、早くプールの時間終わってほしいわ」
「自由時間とか言われても、私達は遊ぶ相手いないしね」
「そーゆーのじゃなくて、俺が気にしてるのは……」
さっきから御幸君の様子が変だ。一向に私の方を見ようとしない。
「ヒャハ! 隙ありっ!」
突如顔面に浴びせられる水飛沫。声の主はもうわかってる。
「倉持君! よくもやってくれたな!」
私も倉持君の顔面に水を浴びせる。
「んげっ?! やりやがったな!」
水泳キャップの似合わない倉持君をみて、私は小さく笑う。……というか。
「御幸君、裸眼だね」
初めて見たかもしれない。いつもゴーグルか眼鏡をかけている御幸君が裸眼になっているところなんて。
「御幸にしては珍しいもんなあ! 眼鏡からスポーツゴーグルに付け替える時も、人が見てねえところで付け替えるから、滅多にお前の裸眼みれねーしな!」
「俺は眼鏡キャラで通ってるから、それでいいんだよ! あんまり見んな、恥ずかしいから」
あ、御幸君の様子が変だったのはそういうことなのね。
(裸眼でもかっこいいことには変わりないのに)
さっきから女子がチラチラと御幸君の方を見ては、甲高い声を上げている。
(クラスでぼっちとは言え、モテるんだろうな)
どうしてだろうか。なんか、気分がどんよりとしてくる。
そして、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。
昼休み、何故だか私の席に倉持君がやってきた。
「ど、どうしたの?」
倉持君は購買で買った大量のパンを抱え、当たり前のように私の隣の席に腰掛けた。
「ぼっち同士、仲良くしよーぜ」
倉持君は私の許可も何もなしに、当たり前のようにパンを頬張る。
「……そーだね、よろしくね、倉持君」
「くん付けなんかすんなって。なんか、痒くなる」
「んじゃー……倉持って呼ぶよ」
ふいに気になることが。
「御幸君は?」
「他クラスの女子に呼ばれてた。まあ、告白ってやつじゃね? うちのクラスの女子は御幸の本性知ってるけど、他クラスの女子は知らねーしな! あいつ、他クラスの女子には告られんだよ!」
倉持の屈託のない笑い声に対し、どうしてか私は笑い返すことができなかった。