第5章 高校球児達との出会い
グラウンドに着くと、倉持君は二年生の輪に走って行った。
「緊張するなあ」
私が呟くと、隣から「大丈夫だろ」と御幸君のなんともいえないフォローが返ってくる。
(ついこの間、仲良くなったばかりだもんね)
今まで一切関わりのなかった野球部。出会ってからはあっという間だったのかもしれない。こうやって私は、御幸君の隣に……グラウンドにまた、立っている。
「男子応援団部の木下さんか?」
倉持君が連れてきたのは、力強い瞳が印象的な坊主の人。あ、坊主と言ってもそれなりに髪の毛は残っているけど。というか、普通に黒髪が残ってるから……坊主とは言わないけど、うーん……。
「はい、男子応援団部1年団長の木下結と言います」
「俺は2年、野球部キャプテンの結城哲也(ゆうきてつや)だ。新しい応援団員らしいからな。是非、野球部員達に簡単な挨拶をしてほしい」
「こちらこそ、そのような場を設けていただいてありがとうございます!」
結城先輩の滲み出るオーラに、私は勢いよく頭を下げる。
「そんなに固くならなくてもいいんだがな。まあいい。
……全員集合ッッ!!」
結城先輩の声が響き渡り、グラウンドからワラワラとユニフォーム姿の人達が集まってくる。誰かが呼びに行ったのか、隣のグラウンドからも野球部員が。
あっという間に私と結城先輩の前に、50人を超える野球部員が並ぶ。御幸君もその列に加わったようだ。
(3年生がいた頃は100人を超えていたっていうしね)
それにしても、野球部員の威圧感が凄い。
「突然集合をかけたのは、紹介したい人がいたからだ。俺の隣に立っている、木下結さん。彼女は男子応援団部の団長で、これからの俺達を応援してくれる人だ。……木下さん、何か挨拶を」
結城先輩がうまいこと話してくれたので、なんとか話せそうだ。
「男子応援団部1年団長の木下結です。学ランを着ていますが、一応女です。つい先日、男子応援団部に入りました。皆さんの応援を精一杯やらせていただきます!」
すると、拍手が聞こえてくる。その音が徐々に大きくなり、心地よいくらいたくさんの拍手が辺りを包んだ。
「よろしくな」
結城先輩から伸ばされた手を、私は強く握り返した。