第5章 高校球児達との出会い
翌日、稲城実業との合同練習はなく、学校で自主練習をすることになった。自主練習とは言うものの、私以外部員がいないから、いつも通りの練習なんだけど。
ちなみに、今日は午後から学校に来た。
(1人で一日は辛いしな)
丁度、野球部も休憩中だったみたい。遠くから目があった御幸君と倉持君が私の元に駆け寄ってきた。
「よっ! 応援団の練習かー?」
倉持君は独特の笑い声をあげながら私の髪の毛をくしゃくしゃする。
「その通りですけど。まあ、昨日は他校で合同練習してきたからね」
私がエッヘンと胸を反ると、御幸君が怪訝そうに顔をしかめる。
「どこの学校でだよ?」
「稲城実業高校! しかも、そこで凄いピッチャーに出会ったの」
今でも忘れられない。あの時受けたボールと、成宮君の自信あり気な表情。結局、メアドまで交換してしまうくらいに仲良くなってしまったのだ。
「あー……そいつ、俺の知り合いだわ」
御幸君は髪をかきあげながらつぶやく。
「成宮鳴君だよ?! すごいね、御幸君」
「知り合いってだけで凄い訳じゃねーだろ」
倉持君のツッコミを受け、私は静かになる。
「でも、本当に成宮君は凄いピッチャーだった。青道の行く先を阻む……最強の敵だと思う」
「そんなのわかってる」
そう言っている御幸君の目は真剣だ。知り合いであるからこそ、成宮君の恐ろしさも敏感に感じ取っているのかもしれない。
「あ、そーだ。お前、野球部応援するなら、顔出ししておいた方がいいだろ」
待って、倉持君。今の話の流れでどうしてそうなったの?!
(確かに、野球部の方々には会ってみたいかも……)
それでも、私は高校で友達を作り損ねたコミュニケーション能力皆無の人間だ。
(野球部の人に嫌われでもしたら、心が折れるどころの騒ぎじゃないよな)
その時、私の右腕が御幸君に掴まれる。
「行ってみるか」
応援する側は、応援される側の人をよく知り、理解しなければならない。……応援団の教えだ。
「い、いってみる」
倉持君もこちらを見て笑い、私たち三人は野球部のグラウンドへ足を踏み出した。