第5章 高校球児達との出会い
ブルーの瞳に見つめられ、練習で疲れて暑いのに、さらに頬が紅潮する。
「青道高校、男子応援団部です……。部員が私しかいなくて、稲城実業高校さんと合同練習をやらせていただいております」
「俺は稲城実業高校野球部エース! 1年の成宮鳴(なるみやめい)! 名前、教えてよ」
私はタオルで顔を拭いてから、改めて成宮君に向き直る。
「1年の木下結です」
すると、成宮君は大きく目を見開く。
「結って……あれ、女子?」
「は、はい。女子です」
まあ、学ランに黒髪短髪という姿だから、男子にしか見えないと思うけど。一応女子なんです。
「結ね! 覚えた! 毎週くんの?」
「迷惑にならないくらいにお世話になるつもりです」
「ねー、敬語やめてよー! 俺たち、タメじゃん!」
初対面の人を相手に敬語を使わないなんてこと、できるだろうか。
「気をつけます」
「ほらー! 駄目だよ、敬語は! わかった?!」
面倒臭い奴。
でも、頬を膨らませている成宮君を不覚にも可愛らしいと思ってしまう私がいる。
「木下! 休憩は終わりだ! 戻ってこい!」
「はい!」
応援団の方々に呼ばれ、私は練習に戻った。
そして、今日の練習が終わった。土日は午前中だけの練習なので、お昼前に終わる。
「初日からよく頑張ったな、木下」
突然かけられる労いの言葉。
正直イカツイ外見の持ち主ばかりの応援団部なので怖かったが、練習の時から優しさは感じていた。
「ありがとう、ございます」
「ここで教えてあげられるのは基礎的なことだけだから。応援には各学校ごとに色があって、面白いぞ。だから、ここでの練習が終わったら、青道の色を出せるようになれるといいな」
「……ありがとうございます、本当に」
「お前は一人だから。リーダー、受け、太鼓……全部習得して帰って、ちゃんと後輩に教えられるようにしろよ?」
辛いばかりじゃない。私のことを応援してくれている人がいる。
それは稲城実業の人だったり、青道の野球部だったり。
「頑張ります!」
こうして、練習初日が終わった。
(さて、帰ろうかな)
校門側に一歩踏み出そうとしたその時。
「あーっ! 待って、結!」