第4章 始動
放課後、私はついに行動を起こすことにした。
(まずは、練習場所確保!)
とりあえず、応援団部の顧問の先生のもとに行き、練習場所についての交渉と指導者の話をしに行こう。
そうと決めたら、善は急げ。
私は職員室に猛ダッシュで行き、勢いよく扉を開く。
「失礼しますッ!1年、男子応援団部の木下です! 男子応援団部の顧問の先生はいらっしゃいますでしょうか?!」
「わ、儂ですが……」
(爺さんだ)
腰がおよそ60度ほど傾いていて、白い髪の毛が申し訳程度に生えている頭皮。顔には何本ものシワが刻まれていて、目は小さくくぼんでいる。
「男子応援団部のォ……顧問のォ……磯辺隆(いそべたかし)です……」
「わ、私は昨日より男子応援団部に入部、団長を任された1年、木下結と言います! つきましては、部室と練習場所の確保、指導者の話をさせていただきたいと……」
あれ、先生の目が泳いでる。話わかってんのかな。てか、よくこんな人が現役で教師やってられるな?!
「部室はいっぱいいっぱいでェ、3年の松浦はァ、3年の中でも学力が一番でェ、受験が控えてるからァ、応援団の練習にはァ、付き合わせられないです」
「じゃあ、どうしろと? 応援団の用具は屋上に置きっ放し。私以外の部員はいないので、指導者もいません。このままじゃ、まずいんじゃないんですか?!」
なんだかイライラしてきた。こんな顧問だから、部も部なんだ。たかが知れてるわ。
「応援団部の荷物は野球部の室内練習場の端に置いてくれて構わん。練習もそこでやればいい。部室ではないが、うちの部の寮の一部屋を貸してやろう。……もしお前が、本気で応援をしたいというのならな」
そう言い切ったのは、磯辺先生の隣に座っているサングラスの先生。
「片岡、先生……」
サングラスにオールバックの黒髪。肌は浅黒く、顔はいかつい。でも、野球部の監督として高校野球界では名を馳せているお方だ。
「片岡先生ェ、ありがとうございますゥ」
「いえ。ただ、指導者はこちらでは探すことはできませんから、後は頼みます」
「大丈夫ですゥ。一つだけェ、心当たりがありますゥ」
(先生同士の連携プレーだ)
これで、練習場所と部室は確保できた。
てか、あれ?
野球部の練習場?!