第26章 脱・学ラン
次の日、私は鳴と渋谷の駅で待ち合わせをした。
男の子と出かけるわけだし、自分の持っている服の中で一番良いものを着てきたつもりだったんだけど……。
「おはよ!」
私より先に駅で待機していた鳴を見て、自信を失う。
(鳴の私服かっこいい……!)
「お、おはよー……」
鳴がこちらに駆け寄ってきて、改めて向かい合うと身長差を感じてしまう。
鳴は私のことをじっと見てから満面の笑みを浮かべる。
「結の私服、すっごい新鮮! てかさ、結構ボーイッシュな服着るんだ? 似合ってるよ!」
「スカート持ってないし、あんまり可愛らしい服がなかったから……。鳴の私服も良いね」
「俺のセンスっていうか、姉ちゃんだな。結と出かけるって言ったら、服選びにいちいちうるさいの!」
「良いお姉さんだね」
挨拶を軽く済ませてから、2人で渋谷の街を歩く。ハチ公の銅像の写真を撮ることから始まり、噂のスクランブル交差点を渡り、行くあてもなくフラフラ。気になった店があったら入ったりして、ウィンドウショッピングを楽しむ。
「結は服とか見ないの?」
「うーん、そんなに物欲はないんだけどね。でもまあ、たまには見るのもいいかも。鳴、付き合ってくれる?」
私の言葉に鳴は一瞬赤くなったけど、直後に首がもげるんじゃないかっていうくらいに首を縦に振った。
「行く! 服見に行こう!!」
鳴は優しいし、面白いし、ちょっとナルシストだけどそこが良いところでもある。
今日、2人で遊びに来て思った。鳴は良い人だ。そして、そんな彼に好かれてる私は幸せ者なんだって。
「結! 見て! これ、すごく良くない?」
鳴に呼ばれて行くと、鳴の手には鍵の飾りがついたシルバーネックレスが。
「……!」
私は胸元を探り、首にかかっている2つの同じネックレスを取り出した。
「あれ、同じの持ってたんだ?」
私は鳴の手にあるネックレスを見た瞬間、俊平ではなく御幸の姿が思い浮かんでしまったんだ。そして、今すぐに会いたいって、思ってしまったんだ……!
「鳴……私……ダメだ」
鳴は眉をひそめる。
「どうしたの?」
「私、やっぱり御幸が好きみたいだよ。御幸が私をどう思ってようと、すっごく好きなんだ」