第26章 脱・学ラン
家に帰って部屋のベッドで横たわっていると、着メロが響く。
(電話……?)
着信は鳴から。
「もしもし?」
『突然電話してごめんねー! 今時間ある?』
「あるよ」
鳴と言葉をかわすのは久しぶりで、少し緊張してしまう。
『明日、デートしない?』
一瞬、思考が停止する。
(デートぉ?!)
危なく携帯を落としかけたけど、なんとかもう片方の手で押さえる。
「な、何でそんな」
『まだ一也と付き合ったわけでもないでしょ? なら、俺と遊びに行こっ!』
「そりゃ、付き合ってないけど……。ていうか、御幸は私のこと、そういう目で見てない気もしてきたんだよね」
きっと、約束も忘れてる。それに、私と御幸は同じ道には進まないから。
(今更告白したって、遅い)
「わかった、明日ね」
『……そっか。ありがと!! すっごい嬉しいんだけど!』
「そんなに喜ぶことかな?」
『喜ぶさ! だって、好きな女の子と一緒に出かけられるとか、幸せ以外の何物でもないからねっ!』
「……ありがとう」
鳴は、2年間ずっと私を想っていてくれている。想いを口にしてくれる。
(鳴みたいな素直な人を好きになった方が幸せなんじゃないかなー)
御幸が行動に移したのは一回きり。私が過労で倒れたときくらいだ。
(あの頃とはきっと、気持ちも変わってる)
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Miyuki side
「まだ付き合ってねぇのかよお前ら!!」
何でそんなことをコイツに言われなきゃなんねえんだ?
「人の勝手だろ?」
「そういう話じゃねーよ! 引退前に約束までしといてそれかよ!」
倉持はいつにも増した悪人ヅラで俺に説教をしてくる。
(こっちだって、うまい言葉なんて知らねーんだよ……)
「木下はお前を待ってるんじゃねぇかよ」
「あいつだって、今も俺を好きだなんて限らねぇだろ」
「俺だって、あいつのこと気になってた。けど、あいつはお前のことが好きだから諦めたんだよ! なのに、木下の唯一の相手であるお前がグズグズしてんなよ! 好きなんだろ?!」
そーだよ。俺は木下が好きだ。その気持ちはあの時からずっと変わってない。
(でも、言葉にして伝えるきっかけなんて知らねぇから……)