第21章 御幸の父親との出会い
「君は、一也の友達なんだね」
驚くほど優しい声で紡がれた言葉。
「私は……」
そこまで言いかけて、ハッと口をつぐむ。
(お互いに好きだってわかってる関係、だよね)
でもまあ、そんなことを御幸のお父さんに言うわけもなく。
「私は、御幸の友達です。彼の野球を、心から応援しているんです。だから、観に来てあげてください」
「……あぁ。こんなことを言ったら縁起でもないのはわかってるけど、落し物をしてよかった気がするよ」
「……?」
「君と、会えた」
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御幸side
自主トレも終え、夜の10時に自分の部屋に戻ってきた。
(あとは明日の宿題やったら寝るか)
そう思って机に向かうと、机の上に置いてある携帯のランプが点滅している。
開くと、不在着信が何件か……親父だ。
(珍しいな、何かあったのか)
少し心配になって電話をかけてみると、ワンコールで親父は電話に出た。
「もしもし? 親父? 不在着信がすごい来てから、何かあったの?」
『久しぶりに一也の声を聞こうかと思ってな』
「なんだそりゃ?」
『……今日、不思議な子に会ったよ』
通話時間が長くなりそうだったから、俺はベッドの上に座る。
『髪の毛が少し長くて、ハキハキした女の子だった。聞くと、青道で男子応援団部に入ってるらしい』
(木下……)
『出会うまでの流れは省くけど、彼女……木下さんは一也をすごく想っていてくれていたよ。それで、夏の大会を観に来て欲しいって頼まれた』
「木下がそんなことを……?」
『観に行っても、いいかな。お前に何もしてやれていないのはわかってる。けど、一也が今、どれだけ頑張っているかを観たいんだ』
久しぶりに話すせいだろうか。今俺、すごく唇が震えてる。緊張してるのか?
「……い、いいに決まってるよ。観に来てよ、俺の試合。背番号2番でキャッチャー、打順6番だから。スタメンだから」
『……そうか! ありがとう、一也。楽しみにしてるよ。……おやすみ』
「……親父も体には気をつけなよ。おやすみ」
通話が途切れた瞬間、俺はベッドに横になる。
(木下のやつ……俺のいないところで親父に会うってどういうことだよ?)
「でもー……、ありがとな」