第20章 薬師戦
1回裏の攻撃は一挙3点!2回表も降谷君が0点に抑えてくれた。しかも、裏では降谷君のバックスクリーン直撃のホームラン。轟君へのお返しとも言わんばかりだ。
(でも、3回からは薬師の打順が2巡目に入る……)
「ガンガン打たせていくんで、みなさんよろ……」
(沢村君!!?)
沢村君は轟君をピッチャーフライに打ち取った!!
「かっとばせーっ! 結城! 結城!!」
4番の結城先輩の長打により、バッターが1人かえる。
『3回裏、薬師高校選手の交代をお知らせします。ピッチャー三野君に代わりまして
真田君……ピッチャー真田君』
(俊平……!)
5番バッターの増子先輩に早速デッドボール。
(ラッキーではあるけど、あの増子先輩が避けきれないなんて……)
登板して最初のバッターのインコースぎりぎりに投げ込む神経の図太さ。
(変わってないなあ……)
続くバッターの御幸を打ちとってゲッツー。
俊平が登板してから流れは薬師に。
『投手交代! 川上!』
沢村君は二巡目の轟君にホームランを打たれ、自分のピッチングを失ってしまった。
「川上君! 頑張れっ!!」
青道が守備であるにもかかわらず、私は叫んだ。
(このピンチに応援しなきゃ……!)
しかし、川上君も打ち込まれ、一点差まで追い詰められる。ランナー二、三塁の時、鋭いライナーかサード側に飛ぶ。
「増子先輩っ!!」
増子先輩はその打球に反応し、見事にライナーをキャッチしてからランナーにタッチ。ゲッツーだ!!
青道の攻撃では結城先輩がソロホームランを放ち、再び2点差に。
守備では川上くんは轟君に勝負を挑まずに歩かせ、次のバッターを綺麗にうちとる。しかし、その後センター前のタイムリーヒットを打たれ、一点差に。伊佐敷先輩の好プレーもあったけど、8回表2アウト一、三塁。
(ここでバッターは俊平)
俊平はこの試合に勝ったら、私に言いたいことがあるといった。その時の顔は真剣そのもので……。
(勝負としても、私に伝えることとしても、俊平は本気で勝ちに来る)
俊平の言葉が聞けなくてもいい。ここで、俊平を抑えて甲子園に行くのは青道なんだ!
『青道高校選手の交代をお知らせします。川上くんに代わって丹波君、ピッチャー丹波君』
役者は揃った。