第17章 -青色の彼のおむかえ-
ちょっと驚いたように
わたしを見下ろす大ちゃんに、
ちょいちょいと手で、
大ちゃんに屈むように合図する。
「…なんだよ?」
大ちゃんは大きな体を屈め、
わたしの顔を覗き見た。
ドキッ…
大ちゃんの顔が近づくだけで、
こんなにも胸が高鳴る。
このまま大ちゃんに
抱きついてしまいたい。
このまま大ちゃんに
優しく抱き締めてほしい。
「…すみれ?」
「えいっ‼︎」
パチッ‼︎
「いってぇ‼︎…おいっ‼︎」
でも、そんなことはもちろんできないから、
わたしは胸の高鳴りをこっそり隠して、
大ちゃんのおでこに
思いきりデコピンをお見舞いした。
「こないだのおかえし♪」
「は⁈」
「こないだのデコピン、
すごく痛かったんだから〜!」
「おまえ…」
ボーッとわたしを見つめる大ちゃんに
口を挟ませないようにわたしは話し続けた。
「これでおあいこ〜♪」
わたしはニッコリ笑って背伸びして、
デコピンした大ちゃんのおでこを撫でると、
大ちゃんはわたしから目をそらした。
「………。」
「大ちゃん?どうしたの?
そんなに痛かった?」
わたしは沈黙が怖くて、
わざと明るく喋り続けた。
「大ちゃん?怒ってる?拗ねてる?
おでこ、ナデナデする?
イタイのイタイの飛んでいけ〜する?」
やっと大ちゃんの口から出たのは、
ことばではなく、大きなため息だった。
「…はぁぁぁぁぁ。
おまえなぁ?ガキ扱いしてんじゃねーよ。」
「きゃーっ‼︎大ちゃんイターイ‼︎
それはわたしできないんだから、ずるいー!」
大ちゃんは片手でわたしの頭をキュッと掴み、
手をグリグリと頭に押し付けてきた。
デコピンよりも痛い大ちゃんの得意技…
「おまえができねぇからやってんだろ?」
大ちゃんはやっとグリグリをやめて、
わたしの頭を優しく撫でてくれた。
「いじわるー!」
「いじわるじゃねーよ。
だいたいすみれがだなぁ…⁉︎」
バサリ…
「きゃあっ‼︎」
雨の予兆なのか、今日は風が吹いていた。
今日のわたしはワンピース。
でも、ミニじゃない。
それでも、
そよそよ心地良く吹いていた風が、
突然強くなり…
思いきりわたしのスカートをめくった。