第17章 -青色の彼のおむかえ-
大ちゃんはわたしの手を握ったまま、
ゆっくりゆっくり歩いていた。
大ちゃんと何を話せばいいんだろう…
久しぶりに会う大ちゃんに、
安心している自分に正直驚いていた。
いろんなコトがわからなくて、
ずっと不安だったのに…
今だって、
大ちゃんが何を考えているのか、
さっぱりわからないのに…
「すみれ…」
「…⁉︎」
先に口を開いたのは大ちゃんだった。
わたしは思わず大ちゃんを見上げると、
大ちゃんはわたしをジッと見ていたようで、
お互いの視線が交わった。
「……なんで、あのバカと一緒にいたんだよ?」
「え…?バカ…??」
「火神だよっ‼︎」
「え…?」
あれ⁈火神さん⁈
「オマエ…あいつになんかされたのかよ?」
「な…なんにもされてないよ‼︎
なんかって、なに?」
「…っ⁈」
あんなに緊張していたはずなのに、
気がついたら、大ちゃんと普通に喋っていた。
やっぱり…大ちゃんといるとホッとする。
大ちゃんがなんであんなコトしたのか、
聞きたいコトはたくさんあるけど、
なんだかそれもどうでもいい気がしてきた。
そもそも、わたしの
ファーストキスは大ちゃんだし…
触れるだけのキスなら、
こないだされたし…
あの日のキスはわたしからだ。
大ちゃんは、
試合前にあんな風に言ってたけど、
ほんとはそれは冗談だったのかもしれない…
ほんとは大ちゃんは、
あのキスは迷惑だったのかも…
だって、大ちゃんは…
それなら、わたしが大ちゃんの
あのキスで悩むのも間違ってる気がする。
「なんかってなぁに?
なぁに?だーいちゃん♪?」
「バッ…⁈」
わたしはもう一度聞いて、
からかうように大ちゃんの顔を覗き込むと、
大ちゃんはわたしの顔を大きな手で、
グイッと押し返した。
「ちょっ…いたーい‼︎」
「ん⁉︎あぁ…わりぃ。」
大ちゃんは焦ったように
わたしの顔から手をはなし、
また気まずそうに黙ってしまう。
大ちゃんと話せないのは
やっぱりわたしがツライ。
だから…
「大ちゃん…」
わたしは立ち止まって大ちゃんを見つめた。