第2章 届かない
リョータくんが三井くんにやられた(実際には三井くんもボロボロにやられてたけど)と聞いて三井くんに問いつめようとしたけど、私の顔を見るなり無視。
話にもならないから仕方ないと諦めた。
三井くんがバスケ部を去ったとき私もやる必要はないんじゃないか、バスマネをやめようかとも思ったけど、いまだ続けてるのは三井くんは戻ってくるとどこかで期待しているからだ。
おそらく三井くんは私はバスマネをまだ続けていると思っていないと思う。
それでも、きっと戻ってくると期待してしまう。この想いは卒業するまで尽きないだろう。
「あ!永井さん!」
「あら、花道くん、それにはるこちゃん」
「雪先輩、こんにちは」
休憩時間、1年の廊下を通ると1年の花道くんとはるこちゃんが一緒にいた。
はるこちゃんは赤木くんの妹さんで、よくバスケ部に見にきてくれる。花道くんが絶賛片思い中の子だ。
「こんにちは。2人とも、どうしたの?楽しそうだね」
「バッシュを買いに行くんです!はるこさんと!」
尋ねると花道くんは万遍の笑みでこたえる。
成程、はるこちゃんと2人きりだから嬉しいのね。
「そう、この間の陵南との時にボロボロになってたもんね、体育館用の靴。これから試合するんだったら、バッシュは絶対に必要だよ。」
「はい!この天才、やはりバッシュが無いと本調子ではないのです!つまりバッシュを履いた俺は超天才!」
ガハハハと笑う花道くん。
自分のことを自分で天才と言ってしまうあたりちょっと面白いけど、昨日の陵南高校との練習試合では花道くん大健闘だった。今までバスケをしたことがないっていってたけど、そこらへんの素人より飲み込みも早いし、あながち天才っていうのは間違っていないのかも?
「雪先輩、よかったら一緒に行きますか?」
「えっ」
はるこちゃんが私を誘うとガハハと笑っていた花道くんが固まる。そりゃそうだよね、2人きりかと思ったんだもん。
「誘ってくれてありがと、でも私用事があるんだよね。」
そう断るとはるこちゃんは残念そうにしていたけど花道くんはあからさまにほっとしてる。いや、そんなあからさまにしなくても・・・。先輩ちょっと寂しいよ?
二人と別れると、私は屋上へ向った。