第9章 8.二つの翳り
「きゃぅ……」
彼のモノが私のナカに挿入ってくる。
大きくて、暖かい。きもち、いい。
「クロ、はぁ」
彼のものを求めて、身体が勝手に動く。
「全く、淫乱な主だ」
クロハが呟いては、私の身を犯す。
敬語で優しい口調であるのと裏腹に、激しく、強く。
「んっ、あっ、あっ、クロハぁ、もぉイっちゃうう……」
「でしたら、お好きなときにどうぞ」
クロハは嗜虐的な笑みを浮かべて、攻めの手を緩めずにそう言う。
あんまりにはげしいので、クロハの身体が私の身体に当たるたび、ほんの少しだけ痛い。けれどそれが逆になんだか気持ちいい。
痛い方が良いなんて、私はどちらかといえば被虐趣味の資質があるのかもしれない、
っ。
「ひゃああ……あ……っ」
ただ、そんなことを考えている余裕もなく、私は果てた。
思考がホワホワと浮いて、クロハがまだ私を激しく抱いているのに、そのことに頭が追いつかない。
ただ、あったかくて、気持ちいい。
しかし、そんな思考放棄の状態を、先ほどのサディスティックな笑顔が許してくれるわけはなく、
カプリ。
「〜〜っ!?」
クロハが私の肩を噛む。
当然、先ほどの甘っちょろい噛み方とは違う。
クロハに噛まれたあとからじわりと血が滲み出ているのがわかった。
「まだ、意識を飛ばすには早いですよ」
クロハが謂う。
「私の牙には淫毒が含まれていましてね」
要するに噛まれると媚薬を飲んだような状態に、なる、と……。
「……!」
突然身体が熱くなって、どうしても、どうしても、クロハにもっと、もっと激しく犯されたくなった。
「く、くろ、クロハぁ……」
「おやおや、言葉になりませんか」
鈴を転がしたように笑うクロハだが、私としては笑い事では、ない。
「おねがいっ、も、もっと、して……」
「ふふ、よく言いました」
…
-
それからというもの、私は何度もイかされて、当然、クロハも数度出した(その度にゴムを付け替えてくれているあたり、優しいと思った)。
何かをする余裕もなく、とにかく無理矢理に意識を起こされ、何度も激しく犯されて。
気づけば夜の11時だった。