第8章 Ex.蛇たちの憂い1
Pt. 2 《盗む》の躊躇い
「──ってわけで、みんなで仕事の合間をぬって、クロハさんの様子を見ることになったっす」
「ふむ、……わかった」
「それで、質問がある人はいるっすか?」
「一ついいか」
「はい、何っすかシンタローさん」
「それはあくまでも、俺たちの主観でいいんだよな」
「はいっす。あくまでなにも変わってない、ふさわしくないと思うならそれで構わないっす」
最終的には多数決のようになるだろう。
全員の報告を聞いて、女王が一体どうするのかはまだわからないが。
「それで?具体的にはなにを見ればいいのさ」
「そっすね、素行と、彩芽さんへの態度、それから彼女以外の人に対する態度なんかもちゃんと見て比べればいいんじゃないかと思うっす」
「なるほどねー。で、順番とかは?」
「決まってないっすから、暇ができた人が暇のある時に見に行けばいいと思うっすよ」
一人一人の質問に応えながら、瀬戸幸助、否、《盗む》蛇は思う。
どうして自分たちがこんなことを、と。
もともとは女王のために始めた人間ごっこだったが、今は、それぞれなんらかの理由があって今の姿に《執着》している。
たとえば自分は、女王のそばにいるために。
たとえば《欺く》は、今の姿の方が便利だからと。
たとえば《焼き付ける》は、この姿が気に入っているからと。
だからこそ、思う。
なぜ自分たちが。
このままでいいのか。
と。
(まあ、憂うだけでは仕方がないんすけどね)