第8章 Ex.蛇たちの憂い1
「コノハくん」
「あ、マリー」
白い髪にピンクの瞳の青年が、佇んでいる。
「もうそんな時間だったっけ」
「うん。またお荷物持ってもらっていい?」
「いいよ」
マリーは持っていた大荷物をコノハに渡す。コノハはそれを受け取ると、歩き始めた。
「ねえマリー」
「なあに?」
「クロハは今日はいないの……?」
「あ、うん。あのね、いま……の二人の……の子のところに行ってるの」
「そっか」
コノハは納得したように頷き、歩き続ける。
その後ろをマリーが歩く。
しばらく歩いて行った先にあったのは、十字架のオブジェだった。
「キド、セト、カノ。今日も来たよ」
手前の3つのオブジェに、マリーは祈りを捧げる。
「……モモちゃん、シンタロー、アヤノちゃん。みんなの……は、元気みたいだよ」
「ハルカさん、エネちゃん……ちゃんと、眠れてる?」
「ヒビヤ、ヒヨリ。仲良くしてる?」
それぞれ、それぞれのオブジェに言葉をつけて祈りを捧げ、全てのオブジェの前に、お供え物を置いて、
「おやすみ。」
と、笑った。
「それじゃあ行こうか、コノハくん」
「うん……」
──女王は、憂いている。
唯一全ての記憶を受け継ぐクロハが、一体なにを思うのかを。
女王は、嘆いている。
全ての命がもう、ないことを。
「……また会えたらな」
しかし女王は願わない、知っているのだ。
皆を蘇らせたところで、終わらないセカイにつれていったところで、
どうにもならないことを。