第8章 Ex.蛇たちの憂い1
Pt.1 女王の憂い
蛇たちの女王であり、今代のメドゥーサであるマリーは、悩んでいた。
「うーん」
「どうしたんすか、マリー」
そこに声をかけてきたのは、緑色のツナギ風のパーカーを着た好青年、《瀬戸幸助》の名を与えられた、《目を盗む》蛇。
「あ、セト。あのね……クロハをほら、二人の……のところに、やったじゃない」
「そうっすね」
「それでね、クロハがどれくらい いい子になったかみようと思ってたんだけど……」
「なるほど、見に行く機会がない、と」
「そうなの。わたし、だいぶ忙しいから……」
緑のパーカーの青年は考える。
「なら、他の人に見て来てもらったらどーすかね?シンタローさんとかお姉ちゃんはともかく、ヒビヤとか、ヒヨリとか」
「うーん、そうだね」
白の女王も、考える。
「じゃあ、みんなの手が空いた時に見てもらおうか」
「わかったっす。じゃあちょっとみんなに伝えてくるっすよ」
「うん。お願いね、セト」
緑のパーカーの青年は去って行く。
「……はぁ」
白の女王は、ため息を吐く。
どんなに似せて作ろうと、本物の記憶を持たせようと、所詮レプリカはレプリカだ。
「会いたいなあ……セト」
エプロンドレスのスカートを翻し、蒼い蛇を引き連れてマリーはその場を後にする。
「……」
今となってはたった一人、当時のままである少年の元へ。