第7章 7.all ever for you.
「クロハは自分のことは不器用だね」
「うるせえ、お前もだろうが」
お互いにお互いの帯を止めたり結んだりして何とか着ること、30分後。
やっとどちらも着付けが終わり、互いにみあった。
「うわあ、クロハ、似合う〜!」
「そういうお前は七五三みたいだな」
「なっななな、な、なにそれえ」
「冗談だよ、似合ってる」
お互いに冗談を飛ばしあったりしながら、特になんの意味もなく写真を撮り、しばらく浴衣姿で過ごした。
「……お祭りの日が楽しみだねえ」
浴衣を脱ぎながら言うと、クロハは無言で頷いた。
/
祭りの日、か。
女王との約束はまだ先だが、ヒヨリに言われたことを含めてなんだか妙な気分だった。
「なあ彩芽」
「なあに?」
/
クロハがいつになく真剣な表情で聞いて来た。……私が聞き返すと、
「俺は、なんでもお前の願い事を一つ叶えてやれる蛇だ。
……そのうち、願いを決めて欲しい」
そう、言われた。
本当に真剣な顔だった。
「………」
願いといきなり言われても困る。私は当惑してしまった。
「そのうちだ。10年越しでも、100年越しでも、俺はお前の願いを叶えてやるよ」
「そっか」
襦袢を脱ぎながら生返事をする。
「今、俺の全ては……常にお前のためにあるから、な。」
クロハははにかんだように笑う。
私もそれに影響されて、はにかんだように、笑った。
//
「ねえマリー、あんなこと言ってよかったの?」
「うん。あのね、クロハはたぶん今、悩んでるから」
「そう。まあ、私たちは女王の命令とあれば、なんでもするから」
「……うん、ありがとう、ヒヨリちゃん」
//
着替えも終わり。
なぜか私はクロハの膝の上に座ってゲームをしていた。
「ときにクロハさん」
「何だ?」
「この姿勢は一体?」
「なんとなく」
なんとなくでこんな姿勢。……されてる側は恥ずかしくてたまらないんだけど。
まあ、別にいいんだけどね。
クロハの体温と、私のためにそうしてくれているという事実さえ、わかっていれば。