第7章 7.all ever for you.
「Parsley, sage, rosemary and thyme」
……?
歌声が、聞こえる。
「誰だ?」
というより、ここはどこだ?
歌声には、聞き覚えがある。
まあ、だからと言って知っている場所とは限らないのだが。
「クロハさん」
歌声が止み、声の主が俺を呼んだ。
澄んだ幼い声。
振り向けば、そこには予想通り、《目を眩ませる》蛇──朝比奈日和が佇んでいた。
「よう、ヒヨリ」
「どうも」
人の良さそうな笑顔でこちらに笑いかけているが、その裏に、もしくは底になにが隠されてるかわかったもんじゃない。
「じゃ、ここはお前の部屋か」
「はい。ちょうど二度寝の真っ最中だったようなので呼ばせていただきました」
「何の用で」
「忠告です」
忠告?
「我らの女王は忙しいので代わりに忠告をしに来たんですよ。
人間の女性に傾倒しすぎるのはやめなさい」
「……は?」
「聞こえませんでしたか?手を引けと言っているんです、如月彩芽から」
「どーしてそんなこと言われなきゃいけねえんだ?アヤメと俺のことは女王サマやお前らには関係ねえだろ」
「確かに私たちには関係ないかもしれませんけど。
じゃあ、このままそのいつ彼女がまた死ぬかわからない状況で関係を続けて、その関係が崩れた時、貴方は耐えられますか?クロハさん」
「は?」
「エネさんやコノハさんのように、不死身の身体を与えられるなら、まだしも。貴方にはそんな力、ないじゃないですか。
そういうことですよ」
……。
わからない。
こいつが一体、なにを言っているのか。
「まあ、とりあえず今は警告だけなので。
この先どうするかは、クロハさんが決めることですし」
ヒヨリは微笑む。
「では、私も忙しいので、また」
曖昧な微笑みを浮かべたまま、ヒヨリがこちらに手を振る。
………、
……
…。
-
跳ね起きる。
「……っ、」
悍ましい夢をみた。
いや、夢ではなく現実なのだが。
「ンなこといきなり言われても、困るんだよ……」
ヒヨリに言われたそれはまるで呪詛のように俺の身体に取り憑く。
「……くそっ」
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