第7章 7.all ever for you.
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夢をみた。
真っ黒な海で、私と、金色の瞳をした蛇が二人きり。
海の中に沈んで行く夢。
真っ暗で、苦しくて、私には蛇の瞳しか見えない、もちろんその蛇も苦しんでいるように見える。
「くろ、は」
その蛇がクロハだということは、なんとなく理解できた。そうだ、これは、クロハで、
「……」
クロハはこちらに全く気付かない。
気付かないというよりは、見えてないのだろう。
蛇の姿だし、何かと感覚の範囲が狭い……んだと思う。
「クロハ、くろは……っ、助けてえ」
私はなにをしているんだろう、同じように苦しんでいる相手に、助けて、なんて。
くだらない。
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「おーい、彩芽、起きろ」
「は、あ……っ、うあ……う……」
何度起きろ、と起こしても、魘されてばかりで一刻に起きそうにない。……心配だ。
──心配だ?
100年と、それからこの短い生活の間に、馬鹿なことを思うようになったものだ。
「起きろ……」
「……やっ、……、うう、助けて、よぉ、クロハ……」
「……。」
彩芽の頬をつねる。
「ふぁ……」
と、同時に、目を覚ました。
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「……いたたた」
クロハに頬をつねられ、目を覚ました。
「いたいなあ!なにするの、もう」
「痛いじゃねーよ、魘されてたから起こしてやったんだぞ」
呆れ気味にクロハが言う。
魘されてたと言っても、夢の内容はさっぱり覚えてない。
「お前に名指しで助けてとか言ってたくせに」
「えっ!?そ、そんな……」
は、恥ずかしい。
聞かれてたとなると余計に恥ずかしい。
覚えてるわけでもないのに。
「……疲れてんだろ、お前。
もう少し寝とけ」
「え、でも……」
「いいから」
クロハがベッドに横たわり、私は腕を引っ張られて無理矢理寝かされる。
……。
私を抱きしめるクロハの体温が、ちょうど良くて、ひどく心地よい。
微睡む。
…………
/
「……眠ったか」
もう一度眠ったのを確認すると、そっと頭を撫でた。
「一体、なんの夢をみていたんだか……まあいい。
俺も、もう少しだけ寝よう……」
腕の中で幸せそうに眠る彩芽を見ると、自分ももう少し眠りたくなった。