第6章 6.欲しかったもの
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「……じゃあ、特に問題はないってマリーには伝えておくね」
「おねがいします」
だいたいのことは、クロハが話してくれた。
遥さんは、時折私に事実確認するだけで、無理に詳しく話させようとはしなかった。
「……じゃあ、また、そのうち様子を見に来るからね」
「もう来んな」
「あはは……そんなこと言わないでよ」
……クロハはよくわからないけど終始不機嫌だった。
遥さんのことが苦手なのか、それとも、私がやけに遥さんに懐いていたから……
……嫉妬?
まさか、馬鹿馬鹿しい。そんな、嫉妬なんてするくらいクロハが子供っぽいわけ……
「……なあお前、他のやつにもあんな表情見せんの?」
ありました。
「ふ、ふつうに……見せるよ……」
「……そうか」
露骨に機嫌が悪い。嫉妬っていうかこれいわゆる一種の独占欲だよね。
「ニヤニヤしやがって」
「に、ニヤニヤ!?してないよ!?」
反論すると、ぷっ、とクロハの笑い声が聞こえた。
ばかにしたよーな、おちょくったよーな、そんな感じの笑い声。
「笑わないでよ……」
「悪い悪い、ムキになるのがあんまり、」
?
「あんまり、なに?」
「……いや、聞かなかったことにしろ」
彼はふいとよそを向く。えっ?何?何を言おうとしたの?
っていうか顔が赤い。……て、照れ隠し……?
「わかったよ……」
私がそう言っても、彼はしばらくそっぽを向いたままだった。とっさに口走っちゃったのかな。
「ねえ、そういえばさ、クロハ、遥さんが言ってた『マリー』って」
そっぽを向かれたままでもなんだか気分が悪いので、適当に違う話題を出す。
「あ?ああ、マリー、マリーな……そいつが、俺たちの『女王サマ』だよ」
女王サマ。
ということは、その「マリー」という人が、彼らを総括する「メデューサ」なんだろうな。
「で、九ノ瀬は女王のお気に入り」
「お気に入りなんだ」
「あいつの他にもう一人、『コノハ』ってやつもお気に入りだ。まあ、俺はそんなのには入ってねえけど」
「?なんで遥さんとコノハって人がお気に入りだとクロハも入るかもしれないの?」
「似てんだよ、顔が」
「3つ子?」
「ちげーよ!あんな奴らと兄弟だったらイライラして死んでる」
「そこまで……」
「あいつら2人ともマイペースだからな」
「ふーん……」
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