第6章 6.欲しかったもの
……。
不思議な夢を、見た気がする。
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気がついたら、朝だった。
何を言っているのかわからないと思うけど、気がついたら朝だったんだ。
昨日、そう、昨日。
昨日、クロハと、シて、それで、挿れて、もらって……から…………で……
……。
途中から記憶が飛んでいる。
「………」
やけに目が冴える。ケータイで時間を確認すると、8時を回っていた。
いつもならとっくに起きている時間だ、そりゃあ目も冴える。……が。
「……クロハ、クロハ」
暖かいというよりは冷たいのだが、クロハの体温を背中に感じる。むしろ抱き枕にされてる。
「クロハー、起きて」
「んぁ……はよ、アヤメ……」
割とすんなり起きてくれたのはやっぱり日頃起きている時間の問題だろう。
「……」
抱き枕状態からは解放される。
が、クロハは虚ろな瞳で何処かをみていて、まだしばらく意識が覚醒するまでかかりそうだ。
「アヤメ、きぶんは……」
「大丈夫だけど」
「よかった……」
安心した風に彼は幼い笑顔を見せる。……えっ?何これ?
クロハさん?クロハさーん?
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あれから2時間、結局10時になってからクロハはばっちり目を覚ました。覚ましてしばらくは《冴える》が聞いて呆れると落ち込んでいたものの、鳥肉を炒めて食パンに挟んだものを朝食として出すとすぐに元気になった。
こういうところは動物そのものというか、本能むき出しというか。まあ、そんなところも悪くはないんだけども。
朝食は遅かったので、昼食は抜くことにしよう、とか、ああだこうだグダグダ言っていると、クロハのヘッドフォンのランプ部分が光る。
「悪い、電話」
どうやらあのヘッドフォンには通信機能もついているようだ。
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「もしもし?クロハ?」
「もしもし、九ノ瀬か」
誰かからかと思えば九ノ瀬からだった。そういや、後でって言われてから連絡を入れてなかったな。
「如月さん、大丈夫?あのあと連絡なかったから、心配で」
「ああ、もう大丈夫だ、お前が心配するようなことにはなってない」
「そう、ならいいんだけど……お使い終わったから、今からそっち行こうと思うんだけど、いいかな?」
「勝手にしろ。……それと、あいつのことを如月って呼ぶのはやめとけ。また昨日みたいになるぞ」
「……うん、わかった。じゃあ、またあとでね」
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