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【カゲプロ】君と、【裏あり】

第4章 4.あなた


「何処に行きたい?」
「んー、買い物。近くのスーパーで十分」
「わかった、じゃあ歩いて行こう」

カバンに携帯電話と財布と鍵を放り込み、彼と一緒に家を出た。

5分程度歩くと、最寄りのスーパーがある。スーパーと入っても、4階建てぐらいの大きい総合スーパーなのだが。

「そういや、私、小さい頃、3階だて以上のお店って全部デパートって言うもんだと思ってた」
「ははは、なんだそりゃ」
「小さい子なんてそんなもんじゃない?あ、このゲーム、新作出てる」
「おー、買えばいいんじゃね」
「あ、こっちも」
「……そんなもんもやるのか……」
「ストレス発散にいい感じだよ?っていうか、そういうこと言う割に、クロハ、この類のゲームうまいよね」

今私が手に持っているのは、有名な迫りくるゾンビを撃ち殺すゲームだ。なぜかは知らないが、クロハは苦手だ苦手だと言う割にこの手のゲームがうまい。

「まあいいけどね、うん」
「何が?」
「こっちの話」
「ふーん、そうかよ」

一通りゲームを見た後、本を見に行く。……クロハはやはり子供みたいなところが有るようで、絵本コーナーへと歩いて行く。

彼が手に取ったのは、「サマータイムレコード」というタイトルの本だった。

「あ、それ。小桜茉莉さんの本じゃん」

小桜茉莉。
50年ほど前から絵本作家として活躍している女性だ。木戸出版、という大きな出版社からいくつもの絵本を発売し、描かれる世界観と、子供にもわかりやすいストーリーから幅広い世代に未だ根強い人気を持っている。

「クロハ、それ、ほしいの?」
「いや、確認。ちょっと気になることがあって」
「ふーん?……そういえば、『サマータイムレコード』って、メドゥーサの出てくる話だったね」
「そう、そう」

繊細に描かれた挿絵を見る。……これは、九ノ瀬遥という男性の描いたものらしい。可愛らしいながら、細やかな心情描写の見える、そして優しいタッチの絵で、こちらもやはり幅広い世代に人気がある。

「……」

クロハは愛おしそうに本の背表紙をなぞり、それから、そっと本を戻した。

「気が済んだ」
「えっ、あ、そう」

本に向けていた優しい表情が消え、いつも通りの好青年のような顔が戻る。

「アヤメ」
「どうしたの」
「まだ買うものがなかったら、もう帰ろう」
「??うん、いいけど」
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