第4章 4.あなた
彼と契約してから4日目、つまり、3日経った。
流石に4日目ともなると、彼の趣味や趣向なんかもわかってくる。
例えば食べ物。
魚は嫌いで、鳥肉が好きなようだ。ネギとモモ肉の炒め物を出したら喜んで食べていたが、太刀魚の蒲焼は微妙な顔で食べていた。
例えば好みのジャンル。
私は勉強の息抜きにゲームをしたり映画を見たりするのだが、彼は存外、スプラッタやホラーより動物と一緒にほのぼのと過ごすゲームなど、可愛いものの方が好きなようだ。
例えば色の好み。
見た目通り黒が好きだが、それとは別に赤い色が好きなようだ。
生活用品などには、黒がないとほぼ必ず赤を選んでいるようだった。
なお、頭はいいようで、私が夏休みの宿題で行き詰まっているとちゃんと教えてくれる。やさしい。
……こうしてみると、蛇というよりはやはり人に近いんだろうなあと思う。
「なあアヤメ」
「なあに」
「どっか出かけねえ?」
「えっ?」
振り向くと、彼はいつ着替えたのか、普段の妙な格好ではなく、割とまともな服装をしていた。
爽やかな感じのグレーのポロシャツと、薄い色のデニムジーンズ。
なかなかどうして似合っている。
「ああ、いいね」
彼をもっと知るチャンスだ。
私は笑って受け入れた。