第13章 appeal 枢√
「私は、選んでいいんですか?」
そう尋ねると枢は少し間を置いて応えてくれた。
「うん、いいんだよ。僕が出来る限り、君の希望に沿うから」
「……私は」
あの場所に居たい。その思いは確かにある、けど……それと同じくらいこの平和な学園をいつまでも守っていたい。この平和を私なんかのせいで壊すことはあってはならない。そう思った。
「私は夜間部の寮に移っても大丈夫です」
「……ほんとにいいの? 君が今のままがいいと言うなら、そう理事長に掛け合うけれど」
「いいんです。私はもう、普通科じゃないですから」
自分の口でその言葉を紡いでしまうと、本当にこれは現実なんだと実感してしまう。それは寂しい事? 悲しい事? ああ、せめて優姫にだけは……きちんと挨拶しておきたいな。
「明日には夜間部の寮、教室で過ごしてもらうことになるけどいい?」
「大丈夫です。少し不安はありますけど」
「……教室では僕の隣にいてもらうから、心配ないよ。寮も……出来るだけ安全な場所にしてあげるね。本当なら、僕の部屋に来てもらってもいいんだけど」
「え!? そ、そんなこと出来ません!!」
「そう? 僕は気にしないのに」
「うっ、えっと……わっ私が気にしますっ」
この至近距離から離れる為に、ばっと飛び起きて距離を取った。