第12章 cage 枢√
「玖蘭さんが、一緒に受け止めてくれるなら……私、頑張ります」
玖蘭さんは独り言のように呟いた。
「許されなくていい。君がもう一度……僕に笑いかけてくれるなら」
それは願いに思えた。
玖蘭さんは私の首筋に唇を這わせた。舌を這わせて、そのざらついた感触に身体は震えた。
「珠紀……」
これは罰なのかもしれない。
私が……玖蘭さんを、好きになってしまったことに対する。罰なのかもしれない。
この想いが罪だというのなら、どうして私は彼と出会ってしまったのだろう。どうして関わってしまったのだろう。懐かしい感覚が頬を掠めた。
「玖蘭……さっ」
「んっ……」
ずぷり。首に何かが埋まる感触がした。同時に、玖蘭さんの喉が鳴る音が聞こえた。意識が何処か置き去りにされて、起きていることが他人事のように思えて。でも……違う。
口を離し、顔を上げた玖蘭さんの口元は真っ赤な血で濡れていた。
私は知っている。ううん、零のその姿を見たからじゃない。ずっと昔に……私はこの光景を何処かで見たことがある。玖蘭さんが、見知らぬ女性と重なって見えた。
その女性の名前……は……。
「……っ」
「ん……っ、はぁッ」
気付いた時には、玖蘭さんが私の唇に自らの唇を重ねていた。貪る様に。ぬめりと忍び込んだ舌から、血の味がした。まるで口移しで、私に血を与えているみたいに。