第12章 cage 枢√
「珠紀、君は自分の運命を受け入れる覚悟はある?」
「……覚悟」
「そう、覚悟。どんな自分になってもそれを認めていける?」
「そんなの……無理だと思います」
今だって自分がヴァンパイアになってしまっただなんて、受け入れ難いのに。
「それじゃあ、全ての記憶を取り戻せたら話は別?」
「え……?」
「全てを思い出せたら、珠紀はどうする? それでも今の自分を拒絶する?」
「私は……」
玖蘭さんの手にそっと触れて、目を合わせる。怖い、けれど知らないことはもっと怖いことだと知っているから。私は選ばなくてはいけない。いずれは受け止めていかなくてはいけない。生きて、いきたいのならば。
「僕も一緒に、君と共に受け止めていく。それでは、駄目かな?」
「玖蘭さんには……優姫がいるじゃないですか」
自分で口にしておいて、悲しくなる。
ああ、私……いつの間にかこんなにも、玖蘭さんの事を……。
「今僕がどうしてここにいるのか、君の傍を離れなかったのか。それだけを考えていてほしいのだけど」
「だって……」
「大丈夫。君一人受け止めていけるだけの容量なら、持ち合わせているから」
一人で抱えていくのは怖くて、だからこの人の優しさを私は利用するしかなかった。そうすることで、細い細い糸だとしてもこの人を自分に繋ぎ止めておけるならと。