第12章 cage 枢√
「うん、たぶんいつもの……だと思う」
「ほんとに? それにしては急だったね。無理はしない方がいいよ?」
「平気。教室についてしまえば、何でもないから」
そう、こんなのいつものことだもの。
優姫に支えられて教室へと入る。やっぱり、零はいないみたい。
「零なら、たぶん暫くまた顔出さないよ」
「そうなんだ……」
彼のいない日常に、きっとクラスメイト達は無情にも慣れていくのだろう。でも私だけは、せめて私だけはそれに慣れたくないなと思うの。慣れていくことは、まるで忘れて行くことと同じに思えるから。
優姫のお陰でなんとか席についたけど、急激な眠気は再びやってくる。こんなに頻繁に起こるのは初めてかもしれない……。耐えられるわけがなく、すぐに私は机に突っ伏した。
次に目が覚めた時には、既に放課後を告げるチャイムが鳴り始めていた。
「これにてHRを終える。というわけで、解散」
先生の声が聞こえてきて、一斉に生徒達が帰り始める。……私は誰にも起こされることさえなかったのか、とちょっとだけ絶望した。
「珠紀、珠紀ったら」
「ん……?」
優姫がいつもより心配そうに近寄ってきた。なんでそんな顔をしているのかな。