第10章 impulsively 枢√
「そう零が言ったんですか?」
「……そういうわけじゃないけど」
「なら私は意地でも零のところに行きます」
ベッドを抜け出そうとすると、腕を掴まれ玖蘭さんに押し倒される。玖蘭さんは今まで見たことがない程怖い顔をしていた。
「どうして君はそう、聞き訳がないんだ」
「どうしてそこまでして、私が零のところに行くのを阻むんですか。玖蘭さんは……優姫のことだけ思っていたらいいじゃないですか!」
言いたくない、こんなこと。けれど一度溢れた想いは、止めどなく溢れ出す。
「私がどんなに玖蘭さんのことを想っても、貴方が好きなのは優姫なんですよね!? なのに私に構うなんておかしいです! 放っておいて下さい! もう貴方にそうやって優姫を理由に愛でられるのは嫌なんです!!!」
気付けばぽろぽろと涙が零れ落ちていた。
私を見てくれない癖に、私に優しくしないで。心から大切でもない癖に、優しく触れてこないで。苦しくなる、切なくなる。こんな気持ちを……私は知らない。知らないのにっ。
「珠紀……っ」
「玖蘭さ……っ!」
息が出来なくなる。
驚いて、目を見開く。すぐそこに、玖蘭さんの顔があって……唇には、柔らかな感触があって。え……?